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"Green and Blue" Dave Stewart & Barbara Gaskin

"Green and Blue" (2009, Long awaited New Album)

e0006365_1683287.jpg 1. Jupiter Rising (D. Stewart)
2. Walnut Tree Walk (D. Stewart)
3. Let Me Sleep Tonight (D. Stewart)
4. Good Morning Good Morning (Lennon / McCartney)
5. Green & Blue (D. Stewart)
6. Any Guru (D. Stewart)
7. Bed of Leaves (D. Stewart)
8. Rat Circus (D. Stewart)
9. The Sweetwater Sea Part 1 (D. Stewart)
  The Sweetwater Sea Part 2 (music D. Stewart, words Peter Blegvad)

Produced and Arranged by Dave Stewart

- Barbara Gaskin (ヴォーカル)
- Dave Stewart (キーボード)
- Andy Reynolds (ギター),
- Gavin Harrison (ドラム),
- Peter Blegvad (ナレーション)
- The Amorphous Choir (バック・ヴォーカル)

夢のような素晴らしさを体験させてくれた来日公演から、まもなく1ヶ月になろうとしている。ようやく、ライブの音に引っ張られることなく聴く事が出来るだろうという思惑で、新作をじっくりと聴いてみたので紹介しよう。まずはアルバム『グリーン・アンド・ブルー』から。

今回のアルバムの特徴を、まずはクレジット面から見てみよう。参加メンバーは、前回の来日公演を思わせるコア・ユニットとでも言うべきもので、デイヴ&バーバラの二人に、ドラムスのギャヴィン・ハリソンとギターのアンディ・レイノルズ。特にギャヴィンは全9曲中8曲に参加している。つまり、このアルバムではドラムスはほぼ100%本物のドラムスで録音されているということだ。アンディは7曲に参加。もちろんギターがメインだが、曲によってはパーカッション、リズム・プログラミング、バッキング・ボーカルを担当している。「ジュピター・ライジング」では"Sound Design on Playout"という役割も担当している。やはりこの4人はもはや一つのグループのような関係にあると言えるだろう。その4人によるアルバムは、私の期待を遥かに超えた作品だった。

ライブのオープニングともなった「ジュピター・ライジング」でアルバムは幕を開ける。ライブでは良く聞いていなかった細部もここでは十分に聴き込むことが可能だ。しょっぱなから、ギターの音を模したキーボードのリフが全体を基調付けている。短いイントロですぐに歌に入り、じっくりと歌いこまれた複雑なメロディ・ラインが、これまた複雑なリズム展開の上を流麗に流れていく。基調はあくまでハード。さびのメロディは耳に残るが、いざ歌おうとしてみるととても難しい。シングル・カットして、プロモーション・ビデオも作製してみてもきっと面白いだろうという意見をバーバラにしたところ興味がありそうだった。本当に作ってくれるととても嬉しい。

2曲目はロンドンの路地の名をタイトルにした「ウォールナット・トゥリー。ウォーク」。これがまた素晴らしいメロディだ。珍しくバーバラの歌い上げる「艶」に耳が奪われる。一歩間違うとこぶしを回して歌ってしまいたくなるようなメロディなのだが、バーバラならではのノン・ヴィブラート系の淡々とした声が、かえって聴き手側の感情移入をより深くしているように思える。この曲だけは、ギャヴィンが参加しておらず、聞えてくるドラムスはアンディによるプログラミングされたものだが、これがまた味わい深い。ぜひライブで聴いてみたい曲だ。中間部のデイヴのソロが、ハットフィールズやキャラヴァンを想起させ、カンタベリー音楽を愛する者の胸を深く、深く打つ。デイヴならではの名曲だろう。

次はライブですでに御馴染みになった「レット・ミー・スリープ・トゥナイト」だ。繊細なバックのアレンジが、スタジオ録音ならではの音で細やかに聞き取ることが出来る。その分、メロディと歌詞に集中して聞くことも出来るし、逆に全体の音に身を任せてしまうこともできる。シンプルな曲だが耳に残る。

4曲目には、ビートルズのカバー「グッド・モーニング・グッド・モーニング」。本作中唯一のカバー曲だ。前2曲がゆったりとしたバラッドだっただけに、この曲で一気に目が覚めるような感覚だ。それにしても、本当にキーボードで音を作っているんだろうかと言うくらいギターやベースの音が格好良い。冒頭の鶏に始まり、犬や馬などの動物たちの声や馬車の走る音など、効果音も盛り沢山で和ませてくれる。

そして、タイトル曲「グリーン・アンド・ブルー」。バーバラの目の色が緑で、デイブの目がブルー、というのは前にも書いたが、それを思い浮かべながら聴くとまたさらに味わい深いものがある。歌詞の中に繰り返し出てくる≪恋人たちの目のように≫と言うフレーズが印象的だ。また、どちらかと言えば抑え気味の前半から雄大な空間へと出て行くような錯覚を覚えるような雰囲気を思わせる展開を見せ、最後には、再び静寂へと戻ってくるところまでをずっと耳が追いかけていくのを止めることは出来ない。最後の一音がきちんと消える(演奏を終える)まで、本当に耳が離せないのだ。控えめなアモルファス・クワイアのコーラスも素晴らしい。ついつい≪グリーン・アンド・ブルー≫と口ずさんでしまう。アルバムのラストを飾ってもおかしくないほどの大作。何度でも繰り返し聴きたくなる曲だ。

6曲にはこれも御馴染みとなった「エニィ・グルー」だ。様々な「導師」を名乗る怪しげな人々を揶揄するような歌詞だが、それを「あなたが私の導師になるなら、私もなれる。あなたの導師になるでしょう」と愛情表現と取れる歌詞を入れることでラブ・ソングのようにも聞えさせてしまうところがデイヴらしい。途中で挿入される効果音にはっとさせられることも。これにはライブでは気がつかなかった。

7曲目は死を意識した人物の言葉にも聞えるメロディアスでシリアスなバラッド。是非歌詞カードを見ながら聴いてほしい曲だ。短いながら、一旦その歌詞を理解した上でもう一度聴くと、まったく深みが異なって聞える。そういう意味でも味わい深い小品だと言える。「ウォールナット・トゥリー・ウォーク」と並んで秀逸なバラッド。

そして8曲目。ライブでも大いに盛り上がったハードエッジでパワフルな曲。これもまた最初から歌のメロディがとても難しい。でもカラオケがあれば歌ってみたい曲だ。アモルファス・クワイアのコーラスも力強く、思わず握りこぶしを突き上げたくなる。バーバラはこの曲がかなりお気に入りだとのこと。

最後は、「グリーン・アンド・ブルー」と並ぶ大作で、二つのパートに分かれている。パート1ではバーバラの歌が、パート2ではピーター・ブレグヴァドのナレーションと言うか朗読がフィーチャーされている。大作でありながらも、リズムが特徴的な跳ねるリズムであるためか、クラシカルさやシンフォニック臭さはなく、むしろ複雑でありながらも軽快に展開していく様が不思議な感覚を与えてくれる。その上、ドラマティックな決めやフレーズが出てくるので、非常に楽しめる楽曲だ。何度も聴いていくことが出来るのは、何度聴いてもその度に発見があるからだろう。

このアルバムを通して共通して感じられるのは、「元気」ということだ。もちろんバラッドでのしっとりとした感触や、「Bed of Leaves」のような厳粛な気持ちになる曲もあるのだが、それでも通奏低音のようにずっと響いているのは「元気」なのだ。これまでのアルバムよりも確実に違う何かを得られるアルバムであり、それが、音楽的なものはもちろんとして、人間としても一歩大きなステップを踏み出したものであることは間違いない。人間デイヴ・スチュワートとバーバラ・ガスキンの現在形のあり様がこのアルバムには詰まっている。そして、さらに前へ、遠くへと進もうという意思が強く感じられるアルバムだと私は感じる。それにしても、これほどまでに「強い」音楽を聴けるとは思っていなかった。この力強さはいったいどこから来るのだろうか。いわゆる音楽ビジネスとは縁遠い生活をしているからこそ、純粋に自分たちの音楽を創り上げることができたのかもしれない。そんな気がしてならない。
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by invox | 2009-04-18 16:09 | ■Music