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ニック・ベルチェ スイス大使館公演

ニック・ベルチェ シークレット公演 於;スイス大使館公邸

・10月13日(水)1900-
 ・ニック・ベルチェ(Nik Baertsch ピアノ)
 ・アンディ・プパート(Andi Puppato パーカッション)
 ・シャ(Sha バス・クラリネット)


本日(14日)から始まる正式な日本公演の前夜、広尾のスイス大使館にて開催された大使主催のプライベート公演。演奏は1時間半未満だったのではないだろうか。しかし、それは非常に充実した時空間であった。

当初、これはソロ公演だと告知されていたのだが、スイス大使による挨拶において、サプライズとしてトリオでの演奏になったことが告げられた。大使による紹介に続いて3人が登場し、すぐに演奏が始まった。ニックは1971年生まれというから今年39歳。前回ローニンを私が見たとき(2006年の10月27日、門前仲町の東京門仲天井ホール)は、以下のようなトリオ編成だった。

・2006年来日公演時のラインアップ
 ・ニック・ベルチュ (Nik Baertsch ピアノ)
 ・カスパー・ラスト (Kaspar Rast ドラム)
 ・ビョルン・マイヤー (Bjoern Meyer ベース)

e0006365_13112314.jpgそう、見ての通り、今回の大使館での公演とは同じ3人編成だが、メンバーも楽器編成も異なっている。これら4人はすべてローニンのメンバーなので、ローニンのバリエーションだということになるし、実際演奏された楽曲は、アンディに確認したところ、すべてローニンのレパートリーだそうだ。明日と明後日のローニン公演は、前述の公演以降行われた公演と同様、本来の5人編成での公演となる。残念ながら前回の5人編成での来日時には、私は見ることが出来なかったので、今回はとても楽しみにしている。

ニックは、ピアノの弦を直接手でミュートしたり、引っ掻いたり、叩いたり、弾いたりしながら鍵盤での演奏と組み合わせていくという独特の演奏方法を持っている。2006年に初めて見たときには度肝を抜かれたものだが、今回も観客の中には初めて見る方も多かったようで一様に驚かれていた。私にしても、2006年の時よりもさらに進化した演奏に驚かされたのだが、より表現の幅が広がり、音楽が立体的に奥行きを増し、何と言うのだろうか、自然を感じさせるような、そんな音楽を聞かせてくれた。また、アンディは、小金物系のパーカッションを中心にリズムを刻むのだが、そこにシャのバスクラがタッピング・タンギングとでも言うべきパーカッシヴな音で絡んでくる。これまで紹介してきた鈴木生子さんのバスクラ演奏でもこのタッピングは用いられていたが、ここまで積極的にリズム楽器のようにバスクラを使っているのは初めてだ。これもまた衝撃的だった。

音楽そのものは、ミニマルなフレージングを重ねながら大きなうねりと小さなうねりとを重ね合わせつつ、残響を模したような残り音を弾き重ねるニックのピアノに焦点が集中する。その「残り音」は、ディレイ・マシンをかけたようにも聞こえるがすべて生音であり、曲の持つリズムと密接に絡みながらもリズムの持っているテンポとは異なっている。それが「自然」を想起させながらも、硬質な打鍵の打ち出すパーカッシヴな響きが部屋の大きさをはるかに超える空間を眼前に現出させる。この全てが厳密に作曲されているというのだから驚きだ。てっきり即興部分もあるのだろうと思っていたので。終演後のパーティでアンディに聞いたところ、ローニンとモービルでは、ローニンの方がよりファンキーで、インプロ部分も多く取り入れているのだそうだ。モービルは「よりアート」な音楽を演奏しているとのこと。言葉で説明するのは難しいけれども、と。ニックとは話す機会がなかったが、アンディとシャはともに人懐っこく、彼らの方から積極的に話しかけてきた。もっと日本での公演をやりたいそうだ。

曲は切れ目なく演奏され、結局何曲演奏されたのか確認できなかったが、4,5曲だったのではないかと知人と話をした。そしてアンコール。聴いたことのない人に、無理矢理にこの音楽を言葉で伝えようとするならば、スティーヴ・ライヒが北欧ジャズとヨーロッパ・ファンクに出会ったような音楽だと言えるかも知れない。かなり強引だが。私の頭の中では終始、ドラムスのインプロヴィゼーションが重なっていた。それは、この音楽がロックでもあることの証に違いない。もちろん。メンバーはそんなことは知ったことではないのだろうが。

前回の来日時には、明治神宮を訪れたという彼ら。禅ファンク、リチュアル・グルーヴといったキーワードを念頭において、彼らの音楽を楽しんでみて欲しい。ECMレーベルからの新作も大変素晴らしいと聞く。明日15日は青山CAY、16日は新宿ピットインでの公演となる。
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by invox | 2010-10-14 13:11 | ■Music