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2010年のライブ観戦を思い出しながら

もうすぐ今年も終わるなぁ、と思っていたら、今年のライブ観戦を振り返っておこうとふと思いついた。もちろん、音楽の。時間軸に沿って思い出しながら簡単に。

1)クラウス・シュルツェ@国際フォーラム、3月20日(土)だったっけ?

 初来日。悪い足を少し引きずりながらの登場。ステージには5台のキーボードを中心に、大型のコンピュータのような機械がずらり。演奏中にはマックのノートも使用していた。前半1曲、後半1曲、アンコール1曲の合計3曲もやってくれた。2曲かなと思っていただけに満足感は十分。基本はインプロビゼーションだが、初来日ということもあってか、日本のファンへのサービスなのか、日本でも再三再発された「ミラージュ」などからのフレーズを鏤めてくれた。一つ、不満だったのは、バックに大写しにされたスクリーン上に出た日本語。誰が教えたのか、やれやれ、という感じの言葉がいくつか。この来日公演は、招聘元の長年の悲願でもあっただろうし、クラウス・シュルツェに対して、あまりに小さい会場で、というのも出来なかったのだろうなぁ。初日に行きましたが、二日目はどうだったのだろうか?そんなことを考えていたら、この日本公演はDVD付きでライブCDが出ているんですね。驚きました。

2)オザンナ@川崎クラブ・チッタ 4月2日(金)
 +デヴィッド・ジャクソン、ジャンニ・レオーニ

 こちらも初来日。イタリアのプログレ・バンドを数多く呼んできたチッタの実績は評価すべきかもしれない。オリジナル・メンバーのリノ・ヴァイレッティ(vo)にほぼ同年代のドラマー、サッサを除くと後はリノの息子を中心とした若いメンバー。そこにほぼ全曲で参加しているのがVdGGのデヴィッド・ジャクソン(sax,flute)と、ソロと1曲だけ参加のジャンニ・レオーニ(key)。ジャンニはオザンナの前身バンドの時のメンバーなのだそうだ。楽曲は基本的にはオザンナのレパートリーだが、演奏は激しい。歌が素晴らしい。リハーサルを少しだけ見させてもらったが、リノが突然ナポリ民謡を歌いだすと他のメンバーが全員それに合わせて演奏するということもあったりして、あぁ本当にナポリが好きなんだなぁと実感。デヴィッドもバンドを絶賛。

 当日の朝にデヴィッドをホテルに訪れて、午前中いっぱい話をした。前に会ったのは2004年だったからすでに5年半が過ぎている。その時の写真と今回のオザンナとの自家製パンフレットをプレゼントしたらとても喜んでくれた。デヴィッドの母親が今年1月に亡くなったのだという話もそのとき聞いた。その葬式で実の兄と40年ぶりに一緒にサックスを吹いたということも。お兄さんはアマチュアながら、自分よりも上手いんだ、と自慢げにいっていたのが印象的だった。

 ライブでは、オザンナの名盤と言われる2枚のアルバム「ミラノ・カリブロ9」と「パレポリ」からのナンバーの他にもデビュー・アルバムや再結成後のアルバムからの曲、さらにはバンド解散期のチッタ・フロンターレの楽曲などが演奏された。加えてゲストの持ち曲として、デヴィッドは「テーマ・ワン」と「ソンニ・ド・ロ」の2曲をバンド共に披露。アンコールで「テーマ・ワン」をもう一度やるという、リノ曰く「サプライズ」まで含めるとデヴィッドのオザンナにおけるポジションの重要さが分かるというものだ。ライブ後、サイン会までの短い時間に楽屋へとバンドを訪れデヴィッドに紹介してもらってサインなどを頂いた。バンドのメンバーにもお手製パンフレットを謹呈。リノが甚く感激して「ベリッシマ」を連発してくれた。作り甲斐があったというものだ。

 バンドは翌日早朝にソウルへと飛び、コンサートを行った後、同じ主催者の開催していたロジャー・ディーン展を見た後に帰国したとのこと。後日、パンフレットのデータなどをデヴィッドに郵送したところ、狙い通りまさに彼の誕生日に到着したとの連絡があった。しかも、そのデータを収めたCDRのジャケットに使用した2004年の写真でデヴィッドが来ていたTシャツをその日はたまたま来ており、娘さんに指摘されたのだと言う。そのCDRを手に同じシャツを着たデヴィッドの写真が送られてきたのは言うまでもない。

3)フィンランド・フェスト2010@渋谷JZ Brat  5月28日(金)
  ワールド・ミュージック・ショーケース

 出演は、スヴェング(フィンランドの超絶ハーモニカ4人衆)、レピスト&レティ(哀愁のヘルシンキ。アコーディオン&ベースのデュオ)、そしてフリッグ(若手No.1 フィドル軍団、圧倒的なパワー。初来日)。フリッグ以外は音を知らなかったのだが、さすがに素晴らしいバンドばかり。圧倒的なフィンランドの空気をたっぷりと堪能できた。三者三様だが、フィンランドの音楽は奥が深い。

 翌土曜日にフリッグのインストア・ライブ+サイン会が渋谷のタワー・レコードで開催された。こちらは、前日見たバンドをより間近で見ることが出来た分、細かいところまで楽しむことが出来た。まぁ時間は短かったけれども、バンドのギタリストであり、友人でもあるトゥオマス・ログレンとも久しぶりに対面し、話を出来たのが何よりだった。このバンドが彼の活動の一番中心にあると以前言っていたのも頷ける音楽だったのだ。是非また来て欲しい。

4)ピーター・ハミル@月見ル君思フ、新宿ピットイン 7月8日~11日

 恒例のピーターの来日公演。今年は各日4つの異なるテーマを掲げての挑戦。初日はギターのみ。二日目はピアノのみ、三日目はVdGG楽曲のみ、最終日はもしこれが人生最後のコンサートだったら、というもの。初日はアコースティック・ギターの音響が抜群に良い月見ルでのライブ。あとはピアノ重視でピットイン。もちろんダブル曲もあったが、延べ60曲程度を演奏した。個人的には、初日のギターのみのステージは日本では一度もやったことがなかったものなので大変嬉しかった。三日目はテーマがテーマだけにもっとも多くの観客が詰め掛けた。そして、これまでソロでは世界のどこでもやったことがない曲が飛び出したのだった。

 三日目には特別な観客が一人いた。父親がピーターの大ファンであったために"はみる"と名づけられた女性だ。そしてその父親は数年前に他界しているため、一人で父親がそこまで好きだったアーティストを見に来たのだという。コンサート終了後のサイン会の際に、この事実がピーターに告げられた。いや、こんなことってあるんだなぁ、と多くの人たちが感動していた。

 ピーターについては、すでに多くを語っているし、言葉で語るべきものでもないのでこの辺にしておく。次はVdGGの新作が来年3月に発表されるが、一足先にお披露目された3曲の中に、「文章」という曲があったことには驚かされた。まさに来日公演時にピーターが読んでいた芥川龍之介の短編集の中の一遍から取られたのは明らかだ。彼が私たちにこの作品が一番気に入っていると言っていたのは本当だったようだ。

5)DAAU(ダアウ)@六本木ヒルズ・アリーナ 9月11日

 ベルギー・ビール・ウィークエンド東京2010というイベントでのフリー・コンサート。これまで全く知らなかったジャズ系のバンドだ。編成はバイオリン、チェロ、アコーディオンにクラリネットというクラシックかと思いそうな楽器が並ぶ。音楽はミニマルなフレージングを重ねるタイプで、大きなうねりを作りながらそれぞれの楽器がソロを取るスタイルだ。これがまた長尺曲が多く、かつヘヴィでスリリング。酔っ払いだらけの会場では不評だったようだが、個人的には大満足だった。ライブ後に最新アルバムと今日のライブを収録したCDRを購入。サインも入れてもらった。この最新アルバムは6枚目だというから既にベテラン。若いのにたいしたものだ。今度是非きちんとコンサートを日本でやってもらいたいと心から思う。

6)ニック・ベルチェ/ローニン@スイス大使館/新宿ピットイン 10月13日、16日

 2006年以来久しぶりのニック・ベルチェ。以前よりもダイナミクスが増したようだ。ミニマルなフレーズの積み重ねとその変形が大変な緊張感と開放感の両方をもたらしてくれる。非常に強い音楽。全開はトリオ編成だったが、今回は5人編成。特に目を引いたのはパーカッション奏者のアンディ・プパート。硬質なピアノの音に煌びやかな表情を加えている。いつまでも見ていて飽きない。ついついニックよりも彼に目が行ってしまった。

7)スリー・フレンズ@月見ル君思フ 12月18日、19日

 昨年9月に続いて2度目の来日。但しメンバーチェンジがあった。ケリー・ミネアは去年9月の来日直後に脱退していたが、今年9月にキーボードのジョン・ドナルドソンとギターのアンディ・ウィリアムスが脱退したのだ。急遽加入したゲイリー・サンクチュアリ(key)には曲を覚えて練習するにはたった2ヶ月しかなかったことになる。ギターが一人になったことは大きな影響はないだろうと思っていた。もともとジェントル・ジャイアント時代は一人で演奏していたわけだし、ギターへの不安があるとしたら、昨年同様、ゲイリー・グリーンの記憶力によるものだけだ。時折フレーズを間違えるからね。

 ゲイリー・サンクチュアリは、ギャヴィン・ハリソンのソロ・アルバム「サニティ&グラヴィティ」に作曲と演奏の両面で貢献しているのを知っていたので実力に関する不安はなかった。しかし、想定外の事故が起きた。飛行機の乗り継ぎの際の手違いで楽器(キーボードとベース)が日本に来ていなかったのだ。せっかく音色作りをしてプログラムを仕込んであったキーボードがないということで、大変なハンデを負ってしまった。少なくとも初回の公演はそれでやるしかなかった。実際、コンサートでは音色の切替が上手く行かない場面も多々あったのだが、にもかかわらずゲイリーは出来る限りの演奏を精一杯行った。見ていてちょっとかわいそうだった。結局その日の夕方にようやく機材が届いたため残りのコンサートでは事なきを得たが、キーボードが届いた時にはほっとしたに違いない。後日、この話をデイヴ・スチュワートにしたところ、そんな恐ろしいこと、想像したくもないとのコメントをもらった。コンサートの前の一番の不安は機材のセッティングなんだ、とのこと。ゲイリー・サンクチュアリとはギャヴィン・ハリソンを通じて知り合っており、とても良い奴だよと褒めてもいた。

 今回、新たに加わったレパートリーには「プロクラメイション」や「ヴァレディクトリー」といった「ザ・パワー・アンド・ザ・グローリー」からの楽曲が含まれており、これは大変嬉しかった。ボーカルのミックも、全開よりはるかに伸びやかに歌っており、バンドとして充実してきているなぁという印象を強く受けた。ゲイリー・グリーンの望みどおり、このバンドでのアルバムを作って欲しいものだ。

          ◇

 以上が今年見た主要なライブの振り返りである。
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by invox | 2010-12-28 23:26 | ■Music