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「シュルレアリスム展」 国立新美術館

「シュルレアリスム展」(国立新美術館)
―パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による―


すでに会期は終了したが、フランスの美術館の所蔵品から抽出された作品で構成された展示会だ。だから、そこには「フランス」が隠れている。展示された作品には多くのフランス外のアーティストの作品も多いのだけど...。もちろん、最初に意識して「シュルレアリスム」という言葉を用いたグループはフランスで活動していたのだけれど。展示会にはその有名なブルトンの「宣言」や文章が多数引用してあった。ひとつの運動として作品群をまとめて展示した形をおおよそ取ってはいたのだろう。最後の方ではその活動が終演した後の、そのジャンルの延長線上にあると括られがちな作品が展示の中心となっていたが。

全体をつらつらと見ていったのだけど、おおよそ時間軸に沿った展示方式が取られていた。最初の方は、どの作品を見ても、今となってはパッとしない印象を受けた。強く感じたのは、この時代は手法・技法が表現の求めるレベルに達していなかったのではないかということ。なので、多くの作品からは「もどかしさ」、「挫折感」を感じてしまった。本当はもっと表現したいものが高いレベルにあるのに、描いていくうちに、どんどん目標とのギャップばかりが意識され、しかし、これ以上手を加えることは、ますますそこから離れていってしまうことになるぎりぎりののところで「完成」させてしまった作品達、という印象だった。それはそれで、未完成の魅力というか、荒削りな魅力、もしくは「可能性」を感じさせる魅力という楽しみ方が出来る。もっとも、既に私達は、その後の時代に出てきたものですら「過去の作品」として「知って」いるので、何を目指していたのかというのが透けて見える場合もありうる。果たしてその時、そういった作品を見て、私はどう感じるのだろうか。

展示作品は、途中から手法・技法が表現衝動に追いついてきたなぁという印象に変わっていった。そうなってくると今度はアーティスト自身の持っているものが個々の作品の差として見えてくる。これは面白い。そうなってくると、見るほうとしても「好き、嫌い」でモノが語れるようになる。あるいは「自分に合う、合わない」で。そこに至って初めて自由な表現が出来ると言っても良いのかも知れない。

初期のシュルレアリスム作品は、現在のシュールとかシュールリアルという言葉の与えてくれるイメージとは裏腹に、執拗に「具体的な意味」をその作品の中に込めようとしているように見えた。自動書記という概念は言ってみれば「降りてきた」状態を指していたのかもしれない。作家であれば「言霊」と言えるが、美術ではよく「ミューズ/ムーサ」が降りてきたという言い回しがあったのではないだろうか。シュルレアリスムでは表現衝動それ自体が作品を自動的に定義している、その作品がどのような作品となるのかは表現衝動によって自動的に決まると考えたのかもしれない。それにしては、初期の作品は、ぐちゃぐちゃな中に意味を持たせるべき形象を無理やり入れ込んだような印象を受ける。つまり、印象を受けた/表現衝動の元となった具象を見る人が分かるようにしたかったのではないだろうかという印象なのだ。まじめだったんだなぁ。

途中2箇所で白黒の映画が上映されていた。2箇所とも、直角に交わる壁面を用いてそれぞれに違うフィルムを映し出していた。そのうちの一本は「アンダルシアの犬」だった。ということは、これらの作品はそれぞれ単独の作品であり、2つの作品を同時に映写してみるようには意図されていなかったのではないだろうか。どのような意図を以ってこのような上映方法を取ったのか少し気になった。

解説に拠れば、ブルトンが宣言を出した当初のシュルレアリスム運動とは「偶然性、夢、幻想、神話、共同性などを鍵に、人間の無意識の世界の探求をおこない、日常的な現実を超えた新しい美と真実を発見し、生の変革を実現しようと試みるもの」だったとか。デュシャンやダリ、マグリットといったアーティストの作品を見ると、既存のものを既存の用途とは異なる用い方を想起させるような配置や組合せ、形や色で、その存在と意味を切り離そうとしていたように見える。それが「無意識」をかき混ぜることになるかのように。本当にそうだろうか?と最近思うようになってきた。

出展作品のアーティストたちを挙げておこう。錚々たる顔ぶれだ。これまで知らなかったアーティストで今回気になったのは、ユディト・レーグルだろうか。

アーウィン・ブルーメンフェルド
アーシル・ゴーキー
アルベルト・ジャコメッティ
アンドレ・ブルトン
アンドレ・マッソン
イヴ・タンギー
インジヒ・ハイスラー
ヴィクトル・ブローネル
ヴィフレド・ラム
ウィルヘルム・フレッディ
エリ・ロタール
カミーユ・ゲーマンス
クロード・カーアン
サルバドール・ダリ
シモン・アンタイ
ジャクソン・ポロック
ジャック=アンドレ・ボワファール
ジャック・プレヴェール
ジャン・アルプ
ジャン・ドゥゴテクス
ジョアン・ミロ
ジョゼフ・コーネル
ジョセフ・シマ
ジョルジョ・デ・キリコ
ドラ・マール
ドロテア・タニング
パブロ・ピカソ
ハンス・ベルメール
ブラッサイ
フランシス・ピカビア
ヘルベルト・バイヤー
ポール・デルヴォー
マックス・エルンスト
マックス・モリーズ
マッタ
マヌエル・アルバレス・ブラボ
マリー・トワイヤン
マルセル・ジャン
マルセル・デュシャン
マン・レイ
ユディト・レーグル
ラウル・ユバック
リュシアン・ロレル
ルイス・ブニュエル
ルネ・クレール
ルネ・マグリット
ロバート・マザウェル
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by invox | 2011-05-22 22:39 | ■Arts