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「エアリアル」 ケイト・ブッシュ

このKate BushというアーティストもPeter Gabrielと同様に良質な作品をポツリポツリと発表するので追いかけていくうちに深みに嵌ってしまう人だ。作品数が少ないことが、妥当というレベルを超えて伝説化や神格化を起こしたりしているのも同様かもしれない。そんなKate Bushの新作がやっと出た。12年ぶりだというが、個人的にはそんなに長い時間がたったという感じがしない。その点でもPGと同じなのだ。私の中では。

"Aerial" Kate Bush

Part One: A Sea of Honey

e0006365_1535866.jpg1. King Of The Mountain
2. π
3. Bertie
4. Mrs. Bartolozzi
5. How To Be Invisible
6. Joanni
7. A Coral Room

Part Two: A Sky of Honey

1. Prelude
2. Prologue
3. An Architect's Dream
4. The Painter's Link
5. Sunset
6. Aerial Tal
7. Somewhere In Between
8. Nocturn
9. Aerial

アルバムは2枚に分かれているが、トータルで80分ちょっと。1枚のMDに入れるとちょうどぎりぎりいっぱいだ。2枚目の頭が鳥の鳴き声を使った特徴のある曲なので、どこまでが1枚目でどこからが2枚目なのかを間違うこともない。で、1枚目が「海」2枚目が「空」である。しかも「蜂蜜の」?

最初の印象は、Peter Hammillの90年代の静謐な作品群に通じるものだ、というもの。何と言うのか、静けさの中に奥深いものがあり、それが何なのか分からない。海のディスクでは大海原を行く帆船のイメージが湧く。昼間の波高い時もあれば、夜の月光の降る中風もなくただ波間をゆっくりと流されていくようなイメージも。「空」のディスクでは上下方向の動きを強く感じさせる。もちろん横の動きもあり、それらが立体的に組み合わされて空中を飛んでいるかのような錯覚に陥る。

共通しているのは、「動いている=止まっていない」という感覚と、実体が身体のような枠の中に「固定されていない=ある大きさの中に閉じ込められていない」つまり自分自身の大きさが変化する感覚。それはまさしく風のように、気流のように地球の周りを動いている、世界を包んでいる大気のイメージだ。もちろん、タイトルの言葉によって先入観が与えられている。しかし、だからといってタイトルどおりのイメージを音楽がいとも簡単に与えうるかということは断じてない。人間は言葉(あるいは言葉のもつ『意味』)で想像力を制限する動物だが、音楽は音であるがゆえにその制約を越えていくことができる芸術だ。

e0006365_15471968.jpgKBの初期のアルバムのようなエキセントリックな刺激は少ない音楽だ。しかし、「愛のかたち(Hounds of Love)」以降のアルバムを聴いてきた中ではもっともストレートに自分の中に入ってきたアルバムだ。私のお気に入りは「愛のかたち」であり、それがもっとも「男性的」なアルバムかもしれないと思っている。今回の「エアリアル」は「愛のかたち」とはまったく異なっている。よりシンプルな構成の楽曲も多く、その分「うた」が際立っている。だから、彼女が映像作品にこだわりを持っていることも知っていながら、このアルバムからのシングルカットである「お山の大将(King of the Mountain)」はビデオ・クリップよりも音楽だけの方が気に入っている。
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by inVox | 2005-11-27 15:34 | ■Music