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「風の前奏曲」

「風の前奏曲(the overture)」

e0006365_10435858.jpgタイの伝統民族楽器のひとつラナート。その第一人者として実在した人物、音楽家ソーン師の姿を描いた2004年のイッティスーントーン・ウィチャイラック監督の作品。ソーン・シラパバンレーン氏(1881~1954)の実話に基づいてはいるがあくまでもフィクションとして作られている作品だ。


e0006365_10442728.jpg映画はひらひらと舞う蝶から始まり、まだ幼い主人公が始めてラナートに手を触れるシーンから始まる。ストーリーは老いゆえに死の床についているソーン氏の回想という形をとっているが、氏の息子や親友の息子といった脇役のストーリーも重畳的に氏の生きている現実を立体的に浮かび上がらせるように綴られていく。

e0006365_10445866.jpg映画の主題は、青年時代の氏の音楽に対する葛藤に置かれている様だ。少年時代から父親に師事し技術を磨くが、いつしか自らの技術におぼれるようになる場面は楽器をやったことのある人ならば身に覚えがあるだろう。それを打ち砕く圧倒的な存在に出会い自らの道を見失うシーン。「音におごりが感じられる」と言い放つ天才ラナート奏者クンインを演じているのは実際の名演奏家(来日公演の実績もある)。「ラナートの巨匠であり、タイの伝統音楽の師であり、タイ古典音楽と現代音楽を融合させた新しいタイプのバンドであるBoy Thai Bandの設立メンバーのうちの一人である」ナロンリット・トーサガー氏。彼は世界中でコンサートを行っており、日本では2004年5月に在京タイ王国大使館主催の“タイフードフェスティバル”において、Boy Thai Bandの演奏を披露したとのこと。このクンインの存在感が圧倒的なのだ。

e0006365_10453111.jpg最も感銘を受けたのはこのクンインと主人公ソーンとの競演のシーン。互いの技量を出し切った演奏は圧巻。手に汗握るとはまさにこのこと。そして、演奏しながらソーンの音楽に感動し涙を流してしまうクンインの音楽への思いがまさしく彼が本物の音楽家であることを明らかにする競演会後の二人の会話。音楽は素晴らしい、ということを再認識させられる場面だ。


一方、タイ、シャム王国で第2次世界大戦のときにどのような政治が行われていたか、ということを垣間見ることができたのが予想外の収穫だった。西欧化を急ぐあまりの極端な文化政策は見ていてつらかった。出演者を見ると主人公ソーン(青年期)と後に妻となる女性を演じる二人は、どちらかというと対の若手の人気の高いある種アイドル的な役者のようである。他はベテラン勢を配しており少しだけ演技力でのバランスが気になった。小劇場を中心とした上映なので上映期間も短いところが多いようだ。民族音楽に興味がある方はもちろんだが、音楽を愛しているという自負のある方はぜひ見て欲しい。この音楽が気に入ったならばタイ映画では珍しくサントラ盤の国内盤が出ているとのこと。
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東京 銀座テアトルシネマ 12月3日(土) 03-3535-6000
大阪 テアトル梅田 12月10日(土) 06-6359-1080
京都 京都シネマ 12月10日(土) 075-353-4723
神戸 シネ・リーブル神戸 2006年1月7日(土) 078-334-2126
九州 シネ・リーブル博多駅 2006年1月7日(土) 092-434-3691
名古屋 名演小劇場 2006年1月14日(土) 052-931-1741
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by inVox | 2005-12-22 10:51 | ■Cinema/Movie