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Thierry Lang, Heiri Känzig, Andi Pupato Trio Japan tour 2016 Spring

何かを書きたくなる音楽。久しぶりの感覚だ。

Thierry Lang, Heiri Känzig, Andi Pupato Trio
Japan tour 2016 Spring

22nd evening: Pit-inn, Shinjuku, Tokyo
23rd matinee: Nardis, Kashiwa, Chiba
23rd Evening: Karura Hall, Kyodo, Tokyo


Set;

1. Embrace
2. Mosquito Dance
3. Open Bonds
4. Mother
5. Moby Dick
6. Traces
7. Heiri Känzig solo - Bass Song (Heiri Känzig)
8. Tender Waltz
9. Swiss Mountain Smells (Heiri Känzig)
10. Moments in Time
11. Andi Pupato solo - Wandering Words
--- encore ---
12. Summertime (George Gershwin)

1,2,3,5,6,7,8,10 from the album "Moments in Time"
4,9,11 from the album "Serenity"
12 is a Jazz Standard arranged by this trio


ティエリー・ラング(p)、ハイリ・ケンジヒ(b)、アンディ・プパート(per.)のトリオ。

いわゆるピアノ・トリオとは打楽器が異なっている。通常はキット・ドラムスを用いることがほとんどだと思うが、アンディの場合は、カホンを椅子代わりに、薬缶のようなシルエットの不思議な手作りの金属製の打楽器をメインに据えている。一部にいわゆるドラムヘッドのような皮を張った部分があったり、丸い穴があけられていたりする。薬缶の口のような、煙突のような部分が内部で反響した音を効率よく客席の方へと誘導しているようで、その煙突から内部にピックアップが挿入されている。皮の部分をたたくとインドのタブラのような高い音も出せるし、穴の部部をふさぐように叩くとやはりタブラのような深い低音が響く。表面をさすると素焼きのツボのような音も出せるし、指先で叩くと金属的な軽い音が鳴る。このメイン楽器の両脇には片皮の大きなハンドドラムのようなものが左右に一つずつ配置されていて、左側が少し小さく高めの音を。右側は大きくて低い音を出せるようになっている。それらを覆い隠すかのように大小さまざまのシンバル類が左右に広がっていく。右側が大型のものを中心にライドや極薄など4,5枚ほど。左側はものすごく小さいものまで5,6枚ほどがそれぞれスタンドに付けられている。左側にはさらにすだれのように小さな金属パイプをぶら下げたパーカッションが3,4種類。縦に超小型のシンバル状のものをひもに通したものが2種類ほど。いわゆるベルの形をしたものが数種類。輪っか状のひもに木の実だろうか木製の小さな殻が数珠のようにつけられたものもある。それとは別にさらにたくさんの木の実のようなものを大量に網に付けたようなじゃらじゃら言わせるものが太古の上に於いて在り、足元にはペダルで操作する金属(タンバリンについているようなもの)が3段2列になったもの(ハイハットのような使い方をしていたようにも思えるがライブ中は足元は前のお客さんの影になって見えなかった)。数種類のシェイカーも用意されていた。そして、新作の1曲目にして、ライブのオープナーでの特徴的な音となったアフリカの民族楽器である親指ピアノ(普通に楽器のネット通販で買えるものだと言っていたが、どうやらドイツのメーカーのものらしい)にピックアップを自作で付けたもの。そうそう、小型の太古のリムの部分に付けられていたのはピックアップの一種らしく、そこから足元のエフェクターにケーブルが伸びていた。MIDIなのか、単純にトリガーだけだったのか不明だが、電子音を流すときにはそれを介して操作していたように見えた。いずれにしても本人もあまりにもたくさんの小物楽器が多いのでごめんね、と言っていたくらいの数と種類だった。私の記憶から漏れているものもまだまだあるに違いない。

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前回の来日は2014年の2月と9月だったが、その時はこの3人での初めてのアルバム「セレニティ(Serenity)」の発売前と発売直後というタイミングだったこともあり、演奏された楽曲は大半が「セレニティ」からのもので、それ以外に「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」や「サマータイム」「ナポリ」「ブルース」が演奏されたが、9月の公演で、1曲だけ新曲として紹介されていたのが今回のアルバムのタイトル曲「モーメンツ・イン・タイム」だった。

今回のツアーでは、新作「モーメンツ・イン・タイム」から、全9曲中8曲を演奏したのだが、それらに加えて前作「セレニティ」から3曲「マザー」、「スイス・マウンテン・スメルズ」そして「ワンダリング・ワーズ」が演奏された。特にうれしかったのは、ハイリ作曲の「スイス・マウンテン・スメルズ」だった。この曲は前回は演奏されていなかったのだ。

さて、オープニングを飾った「Embrace」。アンディの親指ピアノにハイリのベースが絡み、そこにティエリーのピアノの高いキラキラした音が乗ってくるイントロは、やはり素晴らしいとしか言いようがなかった。そしてメインとなるピアノのフレーズが入ってくる瞬間のカタルシス。この曲が今回一番聴きたかったのだ。

2曲目は「蚊のダンス」ティエリーのどこまでも軽い左手のコードの刻みに右手が自在にメロディを載せていく。ハイリのソロもユニーク。そしてさりげなく、しかし、この曲の胆でもあるアンディのパーカッション。気持ちいい! 3曲目にはアルバムの流れとは違った「Open Bonds」が配されていた。これもゆったりとしたリズムが気持ちよく、ベースの解放弦を上手く使いながら、ハイリが左手でベースのボディを軽くたたきながらアンディと掛け合いのようなことをやっていた。4曲の「マザー」はティエリーのピアノでのイントロがアドリブになっていて毎回違った。この曲で一息つくような感じだ。

そして、大曲「モビー・ディック」。クジラの鳴き声はハイリがベースのハーモニクスを上手く使いながら弓で擦って出している。なるほど。大海原でのクジラの雰囲気がのっけから全開だ。ある意味シンプル極まりないのだが、いつまでも聴いていたくなる不思議な曲。アルバムの中でも白眉だったが、ライブでもハイライトの一つだった、続く6曲目「トレイシズ」では、ハイリがベースの1,2弦に(2,3弦だったかも知れない)木製の洗濯ばさみのようなものを取り付けてから始まった。これって、その昔見たフレッド・フリスがギターに金属製の洗濯ばさみを付けていたのと同じ発想だ。プリぺアド・ベースだ! こういう仕掛けでアルバムでのあの音が出来ていたのか!ととても驚かされた。そして、その驚きを残したまま(洗濯ばさみは残さずに外して)、7曲目は、ハイリのソロだ。げっ、凄い! とんでもないひとだ。うわぁ、やられた~。と思っていると、そのまま和やかな「ベース・ソング」のイントロへと切り替える。この落差の激しいこと。思わず笑みがこぼれた。この曲がまたいいんだなぁ。この人の作曲はとても好き。
ハイリのソロの次は、ティエリーのソロ。これもまたすごい。短めだけど、そのまま「テンダー・ワルツ」に繋げていって、緩急自在。やはりこの人の作曲センスとアレンジのセンスは並外れて素晴らしい。
9曲目に再びハイリ作曲の「スイス・マウンテン・スメルズ」では弓を使ったイントロから爽快なスイスの風景が苦も無く浮かぶ。あぁ、いっぺん行ってみたいなぁ。アンディにもおいでよ、泊めてあげるからと誘われているしなぁ。行きたい!という思いが強くなった1曲でした。そして、ティエリーのピアノからタイトル曲「モーメンツ・イン・タイム」。ある意味、ライブでは経験済みなので、今回はむしろ安心して聴けた。安心して、というのはちょっと変だが、「馴染み」の感覚だと言えばわかるだろうか。「最後の1曲の前にもう一度紹介しよう」とメンバー紹介をティエリーが行い、いよいよラスト「ワンダリング・ワーズ」。これにはアンディのソロがイントロに付加されていて、これがまた素晴らしい。一般的なドラム・ソロとは違って、基本はカホンと薬缶もどきを中心に金物が載る感じだ。いや面白い。そして曲はもう大好きな曲なので気分はノリノリ。終わった時にはウォー!てな感じになってしまった。

アンコールは1曲のみ。それが前回も演奏した「サマータイム」。ハイリのベースによるイントロは、初めて聞いた時にはこの有名な曲だと分からなかった。左右の手でボディを叩いて軽快なノリを出していく。Nardisではティエリーが悪乗りして、観客に手拍子を打たせてハイリを煽ったりして、無茶楽しい演奏だった。

このトリオ、全部の曲に共通して感じるのは、特に難しい構成だとか、難しい顔をしての演奏がなく、基本構造が取ってもシンプルなものが多いことだ。だから、とても耳に馴染み易い。だけど、今までこんな演奏聴いたことがない、と思わせる。いつまでも聴いていたいと思わせる不思議な音楽だ。どの曲も主旋律はとてもシンプルで優しい。それを何度も繰り返す。崩す。戻る。こう書くとなんだか普通に思えるが、とんでもなく普通じゃない。不思議だ。

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by inVox | 2016-04-26 11:40 | ■Music