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"Kriya" (2006) Kriya

"Kriya" (2006) Kriya (Alba ABCD 210)

  1. Ganesha (Peter Lerche, lyrics trad.)
  2. Saalina (Pauliina Lerche arr. Pauliina & Peter Lerche)
  3. Hanuman (trad. arr. Kriya)
  4. Buddha (Peter Lerche, lyrics trad.)
  5. Kain Mina (trad., arr Peter Lerche)
  6. Vandee Maataram
  (trad., arr. Sarathi Chatterjee, Lauri Porra, Mikko Kaakkuriniemi)
  7. Virsi (trad., arr. Pauliina Lerche)
  8. Champagne in her Shoe (Peter Lerche)
  9. The Harvest (Lauri Prra)
 10. Patanjali (Peter Lerche, lyrics trad.)
 11. Jasminikukat (Peter Lerche, lyrics Pauliina Lerche)

e0006365_804652.jpgMusicians:
Sarathi Chatterjee, vocals
Peter Lerche, guitar
Pauliina Lerche, accordion, kantele, vocals, e-violin
Lauri Porra, bass
Gulfam Sabri, tabla
Mikko Kaakkuriniemi, drums

フィンランドの天才ミュージシャンであるポウリイナ・レルヒェと、その夫でありギタリストのピーター・レルヒェにインド人らしきミュージシャン2人にフィンランド人2人の合計6人編成のバンド。ピーター・レルヒェの生い立ちと音楽的履歴を色濃く反映したインド古典伝統音楽、フィンランド民俗音楽、そしてロックの入り混じった、なんとも不可思議な音楽である。歌物とインストものがあるが、歌物はインドのサンスクリット語でSarathiが歌うものと、フィンランド語(と言っても、ポウリイナのソロと同様、カレリア地方の古い方言だ)でポウリイナによって歌われるものとがあり、しかも単独のものもあれば二人で歌っているものもある。伝統的なロックンロールのコードをラフなギターが刻むイントロからいきなりインディアン・ポップのようなボーカルが入ってきたり、インド音楽によく見られる実験的なドローンをバックにゆったりと語られるように歌が流れる曲があったりと、そのバラエティに富んだ音楽には驚かされる。

お目当てのポウリイナについて言えば、彼女はここではアコーディオンをメイン楽器に、ボーカル、カンテレ、バイオリンと、縦横無尽の活躍を見せているのだが、音的な主人公は夫であるピーターのギターだろうか。ペッカのバンドでもギターを弾いていた彼の音の特徴は、フィル・ミラーやマイク・オールドフィールドを髣髴とさせるまろやかに歪ませた、艶やかな音色にあるだろう。フレージングはクラシックからロック、ジャズ、フィンランド・フォーク、ロックンロールにインド音楽まで幅広すぎて、強烈だが、個性を掴むのに時間がかかるタイプかもしれない。だが、時にコミカルに、時にリリカルに、シンフォニックに、ダイナミックに弾きまくるそのスタイルは彼独特のものである。

"Kriya"とはサンスクリット語だそうで、英語で言うところの "WORK" あるいは "PROCESS" に相当するらしい。バンドの名前でありアルバム・タイトルでもあるこの言葉にどんな意味を込めているのであろうか。先に紹介したピーターのソロ・アルバム "Peshawar Diary" の中にもこのアルバムに共通するテイストの楽曲が数曲あるが、それは、このバンドがピーターのリーダーシップの下にあることを意味しているのだろうか。20歳という年の差カップルであるこの夫婦のコラボレーションは、二人の音楽性の違いからとんでもなく刺激的なものとなる可能性をまだまだ秘めている。このアルバムだけで手の内全てを晒したわけではないだろう。

天才的な作編曲の能力とマルチ・インストゥルメンタリストとしての才能を持つポウリイナと幅広過ぎるほど幅広い音楽性を持つギタリスト、ピーター。それに加えて、ベースとドラムスがとても上手い(ドラムスはクリス・カトラー的なテクニカルにしてストイックな音を時折り聞かせてくれる。これにはびっくりさせられた)。インド楽器はタブラしかないのだが、楽曲自体の持つ個性と、一方のメイン・ボーカルがインド人であることもあって、全体的に強烈なインド音楽の香りが立ち込めている。その一方でフィンランド・フォークのルーツ音楽的な響きもまた強烈だ。そしてそれらを支えるリズム隊は強力なジャズ・ロックの語法をものにしている。

散々書いてきたが、例えに使えるようなほかのバンドを私は知らない。つまり、こればっかりは、実際に聴いてみないと分からないだろう、ということだ。蛇足ながら、本作品はスーパー・オーディオCDのハイブリッド・ディスク仕様である。先に紹介したPauliina Lercheの2ndアルバム「Malanja」もそうだったから、SACDの音のよさに彼女がほれ込んだものだと思われる。しかも、今回さらに踏み込んだことに、5chのマルチ・チャンネルの表記となっている。うちには残念ながらSACDプレーヤーがないので確認は取れないが、いったいどんなミックスになっているのかとても気になっている。あぁSACDプレーヤーが欲しくなってしまった。

もうひとつ蛇足だが、Pauliinaが使っているフィンランドの民俗楽器カンテレにはいろんな種類があるようだ。彼女のソロ1作目とPeterのソロ・アルバムも紹介されているこのようなカンテレ(メーカー?)のサイトも見つけた。
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by inVox | 2006-09-09 08:09 | ■Music