ブログトップ

Out of My Book

invox.exblog.jp

Official inVox Blog; Watched, Read and Listened in my real life.

「麦の穂を揺らす風」(2006)

「麦の穂を揺らす風」(2006年/イギリス、アイルランド、フランス合作)

e0006365_14231574.jpgアイルランド独立運動に身を投じた少年の話。と書いてしまえば革命の英雄物語とも誤解されない。映画はどこまでがリアルなものかは抑分からないが、リアリティに満ちている。カンヌ映画祭でのパルムドール受賞作。

イギリス側の武装警察の描かれ方は、まるで洋画での日本軍の描かれ方のようだった。意地悪く、横暴で、残酷で、威圧的。権力をかさにきた嫌な奴ら。一方でIRAに属した少年たちもまた残酷で、双方の描き方に偏った見方はあまりない、と感じたが、全体としてはアイルランド独立運動への重心の置き方がされたいた様にも思う。イギリス軍側の登場人物が、内側から描かれることはまったくない。IRAの中枢が描かれることもない。あくまでも、中心は一人の少年とその周りの身近な人物たちだ。

監督:ケン・ローチ(『やさしくキスをして』『明日へのチケット』)
出演:キリアン・マーフィ(『バットマン ビギンズ』『真珠の耳飾りの少女』)
   ポーリック・デラニー
   リーアム・カニンガム(『デス・サイト』『ドッグ・ソルジャー』)
   オーラ・フィッツジェラルド

「イギリス占領下のアイルランド」でのIRAは純粋に独立運動として捉えることができる、と映画の途中まで感じていた。だが、共和国政府がイギリスとの和平条約を結ぶあたりから共和国政府とIRAとの関係は崩れてしまう。IRAは政府にとっては「極右」という扱いになってしまうように思えた。「平和」と「自主独立」は、最初、同じものであるかのように目的としてあったはずなのに、現実は分離して扱わざるを得なくなる。この映画は、抑圧に抗う勢力のすべてが、必ずしも同一のベクトルを以っていわけでも、正しいわけでもないということを見せ付けてくれた。もちろん、どれが正しく、どれが間違っているという主張があるわけではない。考えさせられる作品だ。

e0006365_14233711.jpg

"The Wind That Shakes The Barley"

いい映画だ。パルムドールも納得できる。幼馴染の葬式で老婆によって歌われるアイルランドの古い歌がタイトルになっている。アイルランドとイギリスの確執は長い歴史を持っている。現在は完全独立を果たしたアイルランド共和国だが、国民感情は今どのようになっているのだろうか。イギリス政府は、今もまた同じようなことを繰り返している…。
[PR]
by inVox | 2006-12-04 14:23 | ■Cinema/Movie