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「狐笛のかなた」上橋菜穂子

「狐笛のかなた」上橋菜穂子


「狐笛のかなた」上橋菜穂子_e0006365_22513265.jpg「児童文学作家」であるご本人にとって、(通常の)文庫化第1作ということのようだ。大人が普通に手に取る(別に子供がとってもいいのだけど)ことのできる文庫という出版形態が、児童文学扱いされている作品にとってどれほど大きな意味を持つのか、想像に難くない。読み手となる層が格段に広がるのだから。野間文学賞受賞作。ハードカバーでは理論社から出ていたもの新潮社から文庫化された。

とはいえ、児童文学としても通用するように書かれているだけに、何と言うのだろう、純粋さの持つ強さ、たとえ捩れていても透明度が変わらない、とでも言えばいいのか、しっかりとした硬さを手ごたえとして感じられる作品だ。一方で柔らかな手触りをも持ち合わせており、そこが児童文学の強さとでも言うべきものなのかもしれない。

主人公とは異なる人物の視点からの語りを織り込みながら、物語が紡がれていく様は、読んでいて気持ちがいい。こんなに短いのがもったいないくらいだ。ただ、下手に深堀をしていってしまうと、この物語のもっている雰囲気というものが変わってしまうのかもしれない。あくまでも「語り」としての物語だと思う。
by invox | 2008-03-18 22:51 | ■Books

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