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Official inVox Blog; Watched, Read and Listened in my real life.

「兵士の物語 2008」

<カノンホールオープン記念企画>
「兵士の物語 2008」(1918 - 2008) at カノンホール、四谷
ストラヴィンスキー没後37周年も記念して全曲ストラヴィンスキー!

e0006365_23591856.jpg 1. 「4つの練習曲 Op.7」より<第3番ホ短調、第4番嬰ヘ長調>
 2. <サーカス・ポルカ>
 3. <クラリネット・ソロのための3つの小品>
 4. <イタリア組曲>
 5. <兵士の物語 2008年版>

クラリネット:鈴木生子
ヴァイオリン:相磯優子
ピアノ   :浦壁信二
兵士の物語朗読:飯原道代


没後37年を記念して、彼の命日である4月6日に全曲ストラヴィンスキーで構成されたステージだ。1,2はピアノ・ソロ。3はもちろんクラリネット・ソロ。4はヴァイオリンとピアノによるデュオ。そして5がトリオ編成+朗読というもの。正直言って、もう2,3曲トリオでの演奏が聴きたかった。顔ぶれがいいだけにもったいない。

「カノンホール」は旧「コア石響」。音響的にはライブ過ぎて、PAは不要だが生音と変な残響音が悪い方向に作用している。もう少し吸音材を工夫する余地が大いにあるホールだろう。バランスが悪すぎる。それでもデュオやトリオでは音数が多い分ソロよりましに聞こえるから不思議だ。

演奏はすばらしかった。が、音響的に不利な点を差し引いて考えなければならないとしたら一点だけ気になったことがある。それは、特にヴァイオリンの演奏を聴いていて思ったのだが、こういう狭いライブな空間で演奏しようとすると、どうしても、演奏する音がより広い空間での演奏に比べると小さくせざるを得ない、という制約が付くことだ。これまで、ジャンルを問わずプロのミュージシャンのライブやリハーサルを見ていて思ったのだが、プロは生音がとにかくでかい。そうでなければ、あれほどのダイナミクスを生み出せないのだろうが、大きな音の上限が高い。そうすることで小さな音もきちんと聞えるレベルにまで上げることができるのだろう。

今回のホールは反響が強く、大きな音では響きすぎて何を演奏しているのか分からなくなるのではないかと思えるほどだった。それゆえ、小さな音での演奏になっていなかったか。もちろん、極小の音の響きを用いる楽曲、息遣いやキーを操作する音までが音楽になっているような、そんな楽曲であれば、小さな音は必然だが、通常のホールでの演奏を想定した楽曲においては、このホールではあまりにも大きな音が出せないのではないだろうか。願わくは、こういう環境でばかり演奏しすぎないように。アマチュアがよく陥る罠に、特に防音工事を施していない自宅での練習、というのがある。そこで周辺住民への迷惑にならない程度の音量でばかり練習してしまい、音楽表現が小さくなってしまうということがある。電気楽器でもそうだ。アンプを通さずに練習してばかりいると、アンプを通したときに音をコントロールできなくなる。アコースティック楽器は尚更出す音量そのものが音楽表現に直接的に結びついているのだから、この「普段出しなれている音の大きさ」はかなり重要なファクターとなる。なので、ちょっと心配になったのだ。特に「イタリア組曲」はもっといい環境で、目いっぱいの演奏で聞きたかったのだ。

「兵士の物語」は以前聴いた7人編成バージョンが初めての体験だった。男声ナレーションによる朗読との組合せだった。今回は、3人編成+女声ナレーション。かなり大きな対比だ。ナレーションの翻訳もかなり違っていたように思ったが短縮してあるのか、単に訳の違いか分からない。音楽は、3人に濃縮されている分、音の密度が高く、エネルギーが高まっているように感じた。個人的な好みから行くと、断然3人編成バージョンがよかった。また、指揮者がいない分3人のアンサンブルがより音楽的なものになっていた。あぁ~、つまり、より「バンド」的なる要素が出ていたということであり、互いの音や呼吸を聴きながらそれに反応していくという、スポンテニアスなアンサンブルだったのだ。出来れば暗譜で、互いの顔を見ながらやって欲しかったなぁ。「楽譜を見る」という肉体的な行為自体が、「演奏する」ことに100%の集中をすることを邪魔してしまうからだ。視覚は五感の中で最も優先順位の高い脳処理を要求するように思える。

不満があるとすると、ピアノがもう少し音数が多くてもよかったのではないだろうか。ちょっと「伴奏」に徹しすぎのような印象だ。もともとのストラヴィンスキーによる編曲がそうなっているのだろうか、オリジナルはヴァイオリン奏者と二人で編曲したとあるので、ヴァイオリンを前面に立てたアレンジになっているのかもしれない。趣味に走った物言いをするならば、ピアノに加えてオルガンを入れたバージョンを作ってみるとロックからのストラヴィンスキー好きにはたまらないものになりそうだ。あと、数箇所にドラムスを入れてみてもいいかも。それくらいのエネルギー感が充ちていた演奏だったのだ。そういうイマジネーションを刺激されてしまった。
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by invox | 2008-04-08 00:00 | ■Music