ブログトップ

Out of My Book

invox.exblog.jp

Official inVox Blog; Watched, Read and Listened in my real life.

第2回 ミュージック from フィンランド

Real & True Live Series 「第2回 ミュージック from フィンランド」
新宿ピット・イン、5月29日(木)


今回で第2回目となるフィンランドのミュージシャン特集。第1回目はメムノン(Memnon)とパウリーナ・レルヒェ(Pauliina Lerche)だった。私はその時パウリーナの音楽と恋に落ちた。

そんな強烈な印象のあるフィンランドの音楽だが、今回も全く知らない二組。今回は平日だしパスしようと思っていたのだが、前日になって急遽見に行くことになったのだ。


"Petteri Sariola (ペッテリ・サリオラ)" ヴォーカル・ギター

e0006365_23251532.jpgこちらは完全なソロ。エレアコを変則チューニングで弾きまくる(ときに弾き語る)のだが、これがまた強烈。ボディを叩きながら5,6弦をスラップしつつ、高音弦でコードやメロディを自在に引きまくるのだ。1曲目は特にインパクトがあった。低音はどうやらパライコか何かでブースとしているのではないかと思うが、パーカッシヴなベースラインもメロディアスなものも同じようによく響く。後半になって、ようやく左手はクラシック・ギターの奏法とあまり変わらないのだということに気がついた。問題は右手だ。驚異的な右手だと思う。ギターのボディを叩くのも同時にやりながらなのは言うまでもない。

楽曲そのものは、変則チューニングであるにもかかわらず、かなりポップで、オーソドックスともいえるほど正統的な音楽だ。ドラムスとキーボードを加えたトリオ編成でもいけるのではないだろうか。そうすればもっと多くの人の耳に届く気がした。ソロでやるのも素晴らしいが、もっと大きな可能性を持っている気がする。

ラッキーだったのは、終盤1曲だけだが、サプライズ飛び入りゲストで押尾コータローとギター・デュオでブルースを演奏したことだ。まさか、日本では圧倒的にマイナーなフィンランドの若手ミュージシャンのライブで押尾コータローのようなビッグネームを見るとは思わなかった。初めて見たが、彼、でかいね。

ペッテリの演奏を見て思い出したのが映画『奇跡のシンフォニー』だった。こちらはタッピングを多用したアコースティック・ギターの演奏がとても印象的だったが、こちらも素晴らしいので是非多くの人に見て欲しい。ハンス・ジマーの音楽も悪くない。



"Oddarrang (オッダラン)"

Olavi Louhivuori(オラヴィ・ロウヒヴオリ)ドラムス
Ilmari Pohjola(イルマリ・ポーヨラ) トロンボーン
Osmo Ikonen(オスモ・イコネン)チェロ
Lasse Sakara(ラッセ・サカラ)ギター 
Lasse Lindgren(ラッセ・リントグレン)ベース 


後半はオッダラン。ペッテリの余韻が強く残っている会場は、後方でペッテリ自身が自分のCDを売りさばいており(もちろんサインしながら)、そこに人だかりが出来ていた。ステージではメンバーが楽器のセッティングをしているのだが会場はほとんど無視。ちょっとかわいそうだった。やがて、照明が落ち、一旦下がっていたメンバーが改めて登場すると拍手。演奏が始まった。

1曲目、トロンボーンのイルマリのエフェクターが接触不良のようでかなり不満をあらわに何とかしてくれと身振りで訴えているが、演奏は止まらない。この演奏がまた静かで瞑想的なのだ。楽曲が素晴らしい。ペッテリのことが吹っ飛んだ。こんな音楽は聴いたことがない。

何と言うのだろうか、ドラマティックに盛り上げるわけではないし、テクニカルな演奏と言うわけでもない。かといってムードで押し通すような音楽でもない。これぞ北欧の風景と人々、という音楽が展開されていく。こればかりは言葉では説明のしようがない。圧倒された。

e0006365_23252974.jpg
ステージではオラヴィと共に、イルマリとオスモがとても目を惹きつけていた。この3人が何と言うか、華がある。ベースとギターの二人は職人に徹して渋く、しかし、確実に音楽の骨格を支えている。どの曲もベースがしっかりした土台を作り、チェロがその上に様々な色を重ねている印象だ。ギターは控えめなフレーズやスライドギターでのドローン的な演奏が多いのだが、これが実は空間の広がりを演出していて、音楽の実体の大きさを聴いている私に想起させていた。曲によっては普通に弾いていることもあったが、これもまた上手い。そして、音楽の外側をとても大きく見せることに貢献している点では同様だ。不思議なギターだ。チェロとトロンボーンの二人はボーカルも取る。ボーカルと言っても歌詞があるわけではなくスキャットなのだが、オラヴィ含めて極めて瞑想的だ。うーん、いける。いけてる。

機材のトラブルは、結局最後まで残ったのがかわいそうだったが、演奏に対する客席からの賞賛はものすごかった。正直言って、ペッテリが楽器小僧のやんちゃな音楽のものすごい版だとするなら、オッダランはより大人の自覚を持ってより広い視野で物事を見つめる音楽だ。その差はあまりにも大きかった。かわいい、と、すごい、の差だ。
[PR]
by invox | 2008-05-30 23:21 | ■Music