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鈴木生子 クラリネット・リサイタル

鈴木生子 クラリネット・リサイタル
(Emsemble Comtemporary α~リサイタル・シリーズ vol.19)


2006年の「20世紀のオランダから」と題されたトリオでのライブから早くも2年が経った。今回のリサイタルは、その間の精進振りを十分に知らしめる堂々たるものだった。

e0006365_11161152.jpg・2008年7月17日(木)
・すみだトリフォニーホール・小ホール
・出演:鈴木生子(クラリネット、バスクラリネット)
 共演:アンサンブル・コンテンポラリーαα
    佐藤まどか、野口千代光、花田和加子(vn)、安藤裕子(vla)、
    松本卓以(vc)、及川夕美(pf)、多久潤一朗(fl・賛助)
・主催:アンサンブル・コンテンポラリー α
・助成:財団法人ロームミュージックファンデーション、
     芸術文化振興基金

1)バスクラリネット独奏のための「二重奏」(テオ・ルーフェンディ)(鈴木)
2)「タッチ・アンド・ゴー」(ローデリック・ドゥ・マン)(鈴木、及川、野口)
3)「恋の相手を変えたのなら」(ヨハネス・オケゲム)(鈴木、松本、安藤)
  ~ 6人の作曲家による同編曲集6曲(鈴木、及川)
4)「ブラック・エルヴズ」(伊藤弘之)(鈴木)
5)「小組曲」(ジャチント・シェルシ)(鈴木、多久)
6)「クラリネット五重奏曲」(エディソン・デニソフ)(鈴木、佐藤、花田、安藤、松本)

いくつかの曲は、前にもライブで見た・聴いたことがある曲だ。純粋な初聴曲はオケゲムとシェルシ、デニソフの3曲。ソロは安定した演奏で、力量の充実度を示していた。嬉しい再演の「タッチ・アンド・ゴー」は、共演者が前回見た時とは異なり、コンテンポラリーαのメンバー。バイオリンは線が太く、パワフル。ピアノは繊細で正確。何より驚かされたのは、バスクラの音。前回と比較して圧倒的に音が強い。芯が強固になっていて、さすがプロのミュージシャンだと実感させられた。惜しむらくはピアノに関しては前回の男性奏者の持っていたパワーに少々及ばなかったことだろう。あくまでも比較の話。でも、もし、今またあの3人でこの曲を演奏したら、ものすごい演奏になるのではないだろうかなどと想像をするのはとても楽しい。

e0006365_11163474.jpg後半、シェルシのフルートとのデュエットでは、互いの演奏レベルが高く、見ていて飽きない。これはいい。もう少しインタラクティヴに掛け合いをしてみるのも面白いだろう。最後のストリングス・カルテットとの共演となる五重奏では、もう少し音量が欲しかった。それぞれにオンマイクでPAを通してみても面白かっただろう。クラシックではないのだから、その辺はもう少し自在に冒険してみてもいいのではないだろうか。5人だったら指揮者も要らない。メンバーどうしのアイ・コンタクトだけでも十分に演奏できたはずだ。それによって生まれるダイナミクスも音楽の一つの魅力である。それはさておき、このクインテットは素晴らしい。緊張感もあり、演奏のまとまり方もよく、相互作用もある。ぜひもう一度聴いてみたい。

今回のコンサート、「リサイタル(独演会)」となっているのだが、プロデューサの意向が強く出すぎた部分がオケゲムには感じられた。あれは作曲家・編曲家のための演目であり、演奏者のためのものではなかったように感じられたのだ。あれは原曲だけでいい。編曲集は余分だった。もちろん、楽曲が悪いと言うのではない。それぞれのアレンジは面白かった。しかし、誰のためのアレンジか?この演奏者であればこうしてみるのが面白いのでは?という観点からアレンジを施したと説明した人は誰もいなかった。皆、自分の興味と好みで編曲をしただけだったのだ。要するに演奏者は誰でも良かったのではないだろうか。この演奏者の技術的特徴はこうだからそれを生かしてどうだ、とか、これまでこういう技法はこの演奏者はあまりやったことがなかったのでそれを試してみたかった、とかいうのなら歓迎だったのだが...。

とどのつまり、音楽は音楽それ自体が語るのであって、すなわち実際の演奏そのものがもっとも大事なのだと思う。もし、作曲者や編曲者が語るのであれば、演奏が終わった後にして欲しい。推理小説や映画での「ネタバレ」と同じで、音楽を聴く前にそんなものを聞きたくはない。いや、音楽を聴いた後でなら、むしろそういうものを訊きたくなる事も多いだろう。また、プロデュースするとは、演奏家の意向や資質を100%引き出すための黒子に徹するべきだ。プロデューサの好みや意向を前面に出すべきではないと思う。そうしたいのなら、そう銘打つべきだ。「○○プロデュース、ナントカ公演」のように。現にそういうものも世に多く見受けられる。
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by invox | 2008-07-26 11:16 | ■Music