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スティーヴ・ライヒを巡って~

アンサンブル・コンテンポラリーα 2008年公演
~スティーヴ・ライヒを巡って~

・12/19(金)すみだトリフォニー・小ホール


  1. Pendulum Music (1968) sound installation(Steve Reich)

  2. New York Counterpoint (1985) (Steve Reich)
   cl: 鈴木生子

  3. Violin Phase (1967) (Steve Reich)
   vln: 花田和加子、音響: 有馬純寿

  4. Layered Song from Long Ago (2008 日本初演) (Masakazu Natsuda)
   ( Music From Japan 2008 年委嘱作品)
   cl:鈴木生子・三木薫 vla:安藤裕子 vlc:松本卓以 vib:神田佳子
   指揮: 夏田昌和

  5. Tehillim (1981)(Steve Reich)
   voice:稲村麻衣子・岩下昌子・辻村倫子・矢ヶ部直子( Voxhumana
   fl: 多久潤一郎 picc: 梶原一紘、ob: 小倉悠樹 e-hn: 南方総子
   cl: 鈴木生子・三木薫、bn: 塚原里江
   perc: 神田佳子・若鍋久美子・木下卓巳・長谷川友美・高橋英樹・峯崎圭介
   el-org: 及川夕美・大須賀かおり、vln: 佐藤まどか・花田和加子、
   vla: 安藤裕子、vlc: 松本卓以、cb: 木村将之
   音響: 有馬純寿、合唱指揮: 西川竜太、指揮: 夏田昌和


今年のコンテンポラリーαの定期公演は、スティーヴ・ライヒをテーマとしたもの。ライヒの作品から4曲が選ばれた。うち2曲は単独楽器による多重奏を単独奏者によって録音されたものとの合奏形式。そして最後に「テヒリウム」。ライヒの中で最初にアルバムを買ったのがこの曲のアルバムだった。NHK-FMでのライブ演奏の放送も聴いた。そんな思い入れのある曲だ。

1曲目は、今となっては古典的というよりも時代遅れのマイクのフィードバックを用いたチャンスオペレーション的な即興曲。マイクロフォンのコードの長さを変えてぶら下げ、それをモニタースピーカーの前で揺らし、スピーカーの前面を通る際のハウリングのみを用いる。コードの長さが違うので周期の異なる振り子となったマイク4本が起こすハウリングもずれを生じ、それが面白い効果を生み出す。もはや誰もやらなくなった手法だ。これにエコーをかけたり、異なる特性のスピーカーを用いたり、お互いの音を拾いあったりさせるというバリエーションもあってもおかしくない。

2曲目「ニューヨーク・カウンターポイント」では、あらかじめ録音された10本のクラリネットと生のクラリネットでの演奏。録音されたものが、座った位置の関係からか随分と左寄りに聞こえたが、どうやらPAの不調が原因だったようだと後で聞いた。クラリネットとはこれほどに多様な音が出せるものなのかと思わせる華麗な響きが鳴り渡る。私がライヒを好きな理由の一つに、楽器の持つ「好ましい音」を積極的に使うところがある。敢えて美しい音と言ってもいい。とても美しい「干渉」パターンを生じるような重なりとずれ。長いメロディがあるわけでもないのにメロディアスに感じてしまう。とても素晴らしい。

3曲目の「ヴァイオリン・フェイズ」も同様にあらかじめ録音されたヴァイオリンとの演奏だが、こちらはよりアグレッシヴな音の重ね方を見せてくれる。少し残念だったのは、それらの複数の音が真ん中で固まってしまい、分離が良くなかったことか。後で聞くと、PAの不調が回復せずモノラルで出力していたのだとか。

4曲目は、ライヒ作品ではなく、本公演のプロデューサでもある作曲家夏田氏のカルテット作品。本人の指揮による演奏だが、これが予想外の収穫だった。何というのだろうかメロディのようなものが自在にうごめく中で4つの異なる楽器が時に対話し、時に一人ごち、時に勝手にしゃべっているかのような不思議な感覚。その中で調和と非調和がその上のレベルで調和していく。おもしろかった。

休憩を挟んで後半にお待ちかねの「テヒリウム」が演奏された。人数も増え、ボーカルが4人入る。何というか、キリスト教音楽とイスラム音楽の中間に位置するような独特のメロディを四人が歌っていくのだが、実はその歌だけではなくてここの楽器がとてもよく配置されているのが、今回の公演でよくわかった。時にメロディは分割され、複数の楽器の上を渡り歩く。さらにはかなりのパートで歌と絡んでいくクラリネットが、この曲の重要な部分を担っているのが良く分かった。ダブル・リード楽器も絡んでいく場面があるが、クラリネットは、言ってみれば、ボーカルと並行に、対比的に、ユニゾン的に、でも時々裏メロ的に演奏されるのだ。これは非常に興味深かった。
 もう一つ面白かったのは、パーカッションのメンバーたちだ。後から手が腫れて痛まなければ良いがと思うほど力強く叩かれていく手拍子。このリズムをキープしていくのは相当な体力が必要だろうと思われるマラカス(のようなもの)。控えめだが適切な響きを聞かせてくれたヴァイヴ。そして、この曲の真髄を体現するかのように全身でのりを表現してくれたハンドドラム。とても素晴らしかった。
 それからずっと、後方で控えめに演奏され続けた電子オルガン。実際にはハーモニウムで演奏されるべき音なのだろうが、よく音を作ってあった。これもまた適切な音作りがされていたことの現われだろう。全体の音のバランスはとてもよく、これまでの録音物や放送で聴いた「テヒリウム」では感じ得なかったほどの興奮を覚えた。それはよりダイナミックなPAのバランスもあったかもしれないし、間近で見ることができたことによるものもあっただろう。しかし、何よりも、演奏そのものの持つ素晴らしさが感動させてくれたのだった。

 現代音楽の中で、ミニマル・ミュージックと呼ばれる音楽はクラシックよりもポピュラー・ミュージックの聴き手に、より好まれることが多い。テリー・ライリーしかり、フィリップ・グラスしかり。これら3人の巨匠はまったく異なる音楽を作り出しているにもかかわらず「ミニマル」として括られるが、それぞれの素晴らしさはまったく別のものだ。その中でライヒはとても端整で、いや、端整という言葉は誤解を招く。とにかく私の好きな音楽家の一人である。今回のコンテンポラリーαのライブを見て、さらにライヒ楽団のライブを見てみたくなった。
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by invox | 2008-12-27 23:39 | ■Music