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"The Big Idea" Dave Stewart and Barbara Gaskin

"The Big Idea"
(1989 - Dave & Barbara's Sgt. Pepper; took 3 years to record!)


e0006365_11143461.jpg 1. Levi Stubbs' Tears
2. My Scene
3. Grey Skies
4. Subterranean Homesick Blues
5. Heatwave
6. The Crying Game
7. Deep Underground
8. Shadowland
9. Mr Theremin
10. New Jerusalem

実質的には、このアルバムこそが、最初から「アルバム」の形を想定して構想された最初の作品だろう。全10曲中4曲がカバーであることは、彼らの制作姿勢がいまだ初期のシングルの頃から一貫していることを示すものだが、残る6曲のオリジナル楽曲の水準は、これ以前と比べてはるかに洗練されていることを示している。

まずカバー曲は以下の4曲である。ボブ・ディランやブルー・ナイルといったアーティストの作品がデイブ・ベリーやビリー・ブラッグと並んでいることに驚かされたものだ。

・Levi Stubbs' Tears (Billy Bragg)
・Subterranean Homesick Blues (Bob Dylan)
・Heatwave (Blue Nile)
・The Crying Game (Dave Berry)


さてアルバムトップを飾っているのがそのビリー・ブラッグの曲だがタイトルにあるリーヴァイ・スタッブスというのはフォー・トップスのリード・シンガーである男性の名前だ。二重にオマージュをささげている形だ。このアレンジがまた素晴らしい。曲の始めと終りにはそのリーヴァイ・スタッブス自身の声も入っているという。2曲目はアップテンポでにぎやかな曲。デイヴ・スチュワート自身の60年代ロンドンで見たというサイケデリック・ミュージックのライブの印象が元になっているという。デイヴが見たのはジミヘンやトラフィックだったそうだ。だからこそのこのタイトルなのだろう。そして3曲目。私個人の中では1,2を争うお気に入りの曲だ。イギリスの空模様に政治の状況を例えた歌詞だが、秘めた力強さというのか、そういうものを感じる。4曲目では再びカバー曲。古いディラン・ソングだ。元々がラップのような歌だが、ここでは完全に解体されエレクトロニックに再構築されている。ついつい口ずさんでしまうリズムとアレンジが楽しい。5曲目は一転して1984年のニュー・ウェーブ系のバンド、ブルーナイルの楽曲だが、これがまた素晴らしい。ミステリアスとはこういう曲のことをさすに違いない。淡々としていながらも切ない。これはバーバラの歌声によるところも大きい。ジャングルを舞台にした歌だが、熱帯雨林を思わせるアレンジは、オリジナルよりデイヴのカバーの方が上だと感じるとは言いすぎだろうか。次もまたカバーが続き、一気に20年時代をさかのぼり1964年発表の心引き裂く失恋の歌。ゆったりとした大きなうねりのある流れの中でバーバラの歌声が心に染みる。オリジナルに戻って7曲目はアップテンポの楽曲だが、テーマは暗く、無意識とアングラ文化についての歌になっている。だが非常にかっこよく、前回の来日公演の際にも演奏された。彼らにとってもお気に入りのようだ。続く8曲目もまたリズムのあるアップテンポな楽曲で、テーマが憂鬱と孤独というのにもかかわらず、ま、英語は良く分からないからいいや!とばかりにノリで聴いてしまうこともできる曲。9曲目は世界最初のシンセサイザーとも言われる電子楽器テルミンの発明者でもあるロシア人発明家のテルミン氏について歌ったもの。独特の不安定さが日本ではよく幽霊映画などに使われた楽器だが、最近では巻上公一氏の演奏が良く知られているだろうし、「大人の科学magazine」のvol.17で簡単な電子キット付きで特集されているので実際に自分で作って楽しむこともできる。 この曲自体はたおやかな表情を持ったミドルテンポのバラッドだ。アップテンポの続いた後ではほっとすると言っても良いかもしれない。もちろんテルミン(らしき)音も聞こえてくる。そして最後に大作がやってくる。イントロののどかな鶏の声から教会の鐘の音、人々の話し声、ラジオから聞こえる音から、一気に圧倒されるキーボードとリズムへとなだれ込む。そしてバーバラの歌が力をこめて歌い上げる。そこに加わるウェールズの合唱グループであるアモルファス・クワイヤ、総勢25名ほどのバッキング・コーラスが分厚い歌声となり荘厳さを演出する。セント・ジョージ教会のパイプ・オルガンが使用されていたり、ウイリアム・ブレイクが歌詞を付けたイギリスの賛美歌「エルサレム」が引用されたりと、アレンジも凝っていて、聴く側も力が入る素晴らしい楽曲だ。

アルバムのクレジットを見ると、デイヴとバーバラの二人に加え、ゲストがいるのだが、特に二人のミュージシャンが強力だ。この二人は互いの相性が抜群に良いと言っているほど素晴らしいコンビネーションを聞かせてくれるギタリストのジャッコとドラマーのギャヴィン・ハリソンだ。二人の参加した曲はそれぞれ次のようになっている。
Jakko Jakszyk - guitar choir (5), guitar (6, 7, 9, 10),
         additional backing vocals (1)
Gavin Harrison - drum kit (7, 9, 10), cymbals (3, 8)
やはり、7と10が出色の出来なのにはそれなりの理由があると言うものだ。

その他のゲストは以下の通り。
Andy Duncan - percussion (9)
Rick Biddulph - guitar, Stratocaster & 12-string samples (1)
Robin Boult - rhythm guitars (5)
The Amorphous Choir - additional backing vocals (10)
Kristoffer Blegvad - additional backing vocals (1)
Lyndon Connah - additional backing vocals (1)
Roger Planer - deep bass voice (4)
Sam Ball - kid's voice (4)

リック・ビダルフはジャッコと共にデイヴとはラピッド・アイ・ムーヴメントでベースを演奏していたり、もっと以前にはバーバラのいたスパイロジャイラにも参加していたり、ハットフィールド&ザ・ノースのロード・クルーをしていたこともある。クリストファー・ブレグヴァドはピーター・ブレグヴァドの弟で、ピーターやジャッコとはザ・ロッジで一緒に演奏していたのでどちらかの紹介かも知れない。リンドン・コナーはジャッコの最初のプロ活動であった64スプーンズのオリジナル・メンバー。アモルファス・クワイヤのリーダーである女性はバーバラが日本にいたときに知り合った人だそうだ。色々とつながっていくものだ。
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by invox | 2009-03-14 11:14 | ■Music