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"Spin" Dave Stewart and Barbara Gaskin

"Spin"
(1991. Pop music for grown-ups!)


e0006365_23161041.jpg  1. Walking The Dog
  2. The Cloths Of Heaven
  3. 8 Miles High
  4. Amelia
  5. Trash Planet
  6. Golden Rain
  7. Your Lucky Star
  8. Cast Your Fate To The Wind / Louie Louie (medley)
  9. The 60's Never Die
 10. Star Blind

長いことこれが「最近作」だった。なんと18年近くも。その間、デイヴとバーバラがライブを行ったのは、1996年のロンドンと2001年の東京の2回、合計3回のショーだけだ。前作『ザ・ビッグ・アイディア』が発表されたのが1989年。前作は3年かけて制作されたとあったが、このアルバムには2年程度しかかかっていないことになる。この年、初めての来日公演が行われ、東京のみならず、名古屋、大阪、横浜と計5回のライブを行っている。その日本ツアーに同行したのが、今回も一緒に来るギタリストのアンディ・レイノルズだ。1991年の印象は、やんちゃなギター小僧というものだったが、今回送られてきた写真を見ると強面の親父風になっている。そのアンディを始めとしてこのアルバムには次のゲストが参加している。前作からはギャヴィン・ハリソンがそのままだが出番は減っているようだ。また、嬉しいのはジミー・ヘイスティングスの参加だろう。

Andy Reynolds - guitar (1-3, 5, 7-9), keyboard bass (4)
Gavin Harrison - drum kit (3), percussion (2, 6), rhythm programming (9)
Jimmy Hastings - flute (6, 10), bass clarinet (10)
Dexter James - shouting (5)
Victor Lewis-Smith - voices (1)
Roger Planer - deep bass voice (1, 5)
Sam Ball - kid's voice (5)

このアルバムでも、やはりカバー曲が収録されている。彼らにとってカバー曲はより自由な表現をする上でとてもやりやすいアプローチなのかもしれない。今回のカバー曲は以下のようになっている。

・Walking The Dog (Rufus Thomas)
・8 Miles High (The Byrds)
・Amelia (Joni Mitchell)
・Cast Your Fate To The Wind (Vince Guaraldi)
  ~  Louie Louie (Kingsmen)(medley)
・McGroggan (Trad.)

アルバムは軽快なヒップホップ風のリズムに乗った古いR&Bのヒット曲で幕を開ける。この曲、ナショナルヘルスがデイヴ脱退後のアラン・ゴウエン時代のライブでも取り上げていた曲だ。この年代のイギリスのミュージシャンにとってはお馴染みの曲なのだろうか。ドイツではシングルCDとしても発売されている。2曲目ではイエイツの詩に触発されたというたおやかな曲。緩やかに浮かび流れるようなバックにバーバラの歌声が重なるさまが心地よく、ずっと聴いていたい気になる。3曲目はザ・バーズのカバーで、実際にセスナ機かなにかで空を飛んでいるようなイメージが湧く滑らかなリズムが特徴的だ。彼らのマイ・スペースでのページにも2曲目と並んでプレイヤーにセットされている。ちなみに私のマイ・スペースでのページの音楽もこの曲だ。続く4曲目もカバーだが、女性として初の大西洋単独横断飛行を成し遂げた冒険飛行家であるAmelia Mary Earhartのことを歌ったジョニ・ミッチェルの歌だ。アメリアは、1937年、世界一周飛行の途中で南太平洋で行方不明になっている。5曲目は一転して激しい曲調のオリジナル。ポップで、ある意味パンキッシュで、ある面ではスラッシュ的だ。6曲目は格調高いコード展開を見せてくれる曲で、ある意味荘厳ですらある。7曲目では60年代に活躍した敏腕音楽プロデューサのジョー・ミークに捧げられたもので、彼が目をつけた女性シンガーは必ず成功したという。60年代を追想する雰囲気に溢れたバラッドだ。8曲目はメドレーでカバー曲2曲がつながっている。前半部分は元々インスト楽曲だったものにあとから歌詞が付けられたものだと言う。後半は日本でもお馴染みのヒット曲だ。そして、その60年代へのオマージュはそのものずばりのタイトル「60年代は死なず」というオリジナル曲で頂点に達する。とは言え、メロディ、アレンジや演奏は発表から18年も経つと言うのに、今、改めて聴きなおしても、まったく古臭さを感じさせないほど普遍的で洗練されている。最後は、やはりデイヴのオリジナル曲で締めくくられているのだが、静謐さを意図したイントロからバーバラの広がりを意図した歌につながり、ジミー・ヘイスティングスのフルートが心に響く。

このアルバムは日本のMIDIがオリジナルの契約を持っていたことから、日本先行発売だった上に、日本盤のみボーナス・トラックが2曲収録されていた。1曲目は1982年に二人がジャッコと共に録音してあったという多少実験的な曲。もう一曲は、イギリスのテレビ番組「ロスト・ビロンギングズ」のために録音されたものの使用されなかったもので、この曲にぴたっと来るシーンがなかったためだそうだ。このドラマは若いプロテスタントの少女がカトリックの少年キーボード奏者と恋に落ちるのだが、狭量さと頑迷さが二人を裂くというもの。ベルファストの迷宮監獄の中で一人の囚人が悲しい哀歌を歌う場面があり、その歌をバーバラが耳で聞き取りをしたのがこの曲の歌詞となっている。デイヴもバーバラもゲール語はまったく分からないためこの曲の歌詞カードは存在しない。原曲はもちろんゲール語のトラッドである。

デイヴ自身がホームページでの解説で書いているが、このアルバムは前作と比べると幾分軽めの作りになっている。が、それはあくまでも表面上のことで、聞き込めば聞き込むほどその音楽的な深さやイマジネーションの広がりが感じられる作品だ。残念ながら前作ほどには人気の出た楽曲が含まれていなかったようで前作の陰に隠れた形になっている。
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by invox | 2009-03-16 23:18 | ■Music