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カテゴリ:■Books( 97 )

「ヒュペルボレオス極北神怪譚」
クラーク・アシュトン・スミス(著)、大瀧啓裕(訳)


PHの日本公演で中断したこともあって、ずいぶんと長い時間がかかってしまった。スミスの短編集だが、テーマが共通している作品はまるで歴史の一部を見ているかのようなリアリティで異様な世界が淡々と展開している。誇張なし、スリルなし、アクションなしなのだが、現実的、あまりにも現実的なのだ。もちろん、設定や話自体は荒唐無稽極まりないのだが、語り口ゆえに、それがまったくの事実であるかのように思える。文字として書かれている部分だけを創作したのではなく、その物語の世界とそれを取り巻くより大きな時空がそこにあって、そこから一つのお話を抜き出してきた、そういう印象だ。好きだなぁ。

ヒュペルボレオス
 「ヒュペルボレオスのムーサ」
 「七つの呪い」
 「アウースル・ウトックアンの不運」
 「アタムマウスの遺書」
e0006365_17493030.jpg 「白蛆の襲来」
 「土星への扉」
 「皓白の巫女」
 「氷の魔物」
 「サタムプラ・ゼイロスの話」
 「三十九の飾帯盗み」
 「ウッボ=サトゥラ」

アトランティス
 「最後の呪文」
 「マリュグリスの死」
 「二重の影」
 「スファノモエーへの旅」
 「アトランティスの美酒」
 
幻夢郷綺譚
 「始原の都市」
 「月への供物」
 「地図にない島」
 「歌う炎の都市」
 「マルネアンでの一夜」
 「サダストル」
 「柳のある山水画」

やはり、一番強い印象を与えてくれたのは「ヒュペルポレオス」の連作か。作品数が多いというのもあるのだろうが、世界の広がりが感じられる。「アトランティス」も悪くはないのだが、作品数が少ないので、アトランティス世界がいったいどういう世界なのか、結局分からずじまいなのだ。ちょっともったいない気がする。最後の「幻想郷奇譚」は、まとまりはないが、それぞれが秀逸な短編なので、それなりに印象に残っている。短いTV番組にしてもよさそうなものばかりだ。
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by invox | 2011-10-19 17:49 | ■Books
「闇の王国」("Other Kingdoms")
リチャード・マシスン(著)、 尾之上 浩司(訳)


私の読むマシスンの長編としては2冊目となる。「アースバウンド」にせよ、これにせよ、とにかく引っかかるタイトルをつけてくれるものだ。素通りできる訳ないだろ!と思いながらもやはり読んでしまうなぁ。

現代の、というには、すでに「昔」としか思えない第一次世界大戦期のイギリスが主たる舞台。主人公がアメリカ人であるせいか、イギリス臭さはほとんど感じない。むしろ、アメリカ人の見たイギリスってこんなんなんだ、という印象だ。「妖精」の捉え方もイギリスの作品に多く見られるものとは若干異なっているように思えた。

e0006365_13334452.jpgタイトルによる先入観、特に「闇の」と付けられたことによる弊害は大きかった。なので、最後までタイトルからの印象と実際の本の中身との印象のギャップに、違和感が離れなかったのだ。受けのいい言葉なので「闇の」としたのだろうが、出版社の安易な発想だ。もちろん、じゃあどんなタイトルがいいのか?と問われても、「other」の直訳的な言葉にはもっと違和感がある。敢えて言い換えてみるならば「別の王国」くらいが関の山だ。これでは売れないだろうな。内容的な連想からは、「闇の」というよりは「影の」とか「もう一つの」という方がしっくりくるかもしれない。まぁ難しいことこの上ない。

宣伝文句にあるような怖い話でないことは確かだ。もちろん、「人間性」の恐ろしさに背筋がぞぞっとするような内容ではあるが、全体を通して読み終わってみると、むしろ「切なさ」に身を貫かれるような「痛み」を感じる。

そうこうしている間に、書店には「リアル・スティール」が平積みされている。こちらは映画化決定という派手な帯が付けられていて、その派手さ加減にうんざりさせられるが、気を取り直して購入するとしよう。映画を先に見た方が、原作を先に読むより好きなので、実際に読むのはまだ先になりそうだ。だって、映画を見てがっかりしたくないだろう?
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by invox | 2011-10-19 13:33 | ■Books
星の光、いまは遠く 上」(Dying of the Light)
   ジョージ・R・R・マーティン(著)、酒井 昭伸(訳)

e0006365_9442275.jpge0006365_9444168.jpgGRRマーティンの最初の長編作品が紹介された。ほんとにこれが最初なのか?と思うほどこなれている。「ハンターズ・ラン」や「タフの方舟」<氷と炎の歌>シリーズよりは多少筆致が固い気もするが、それが原文の特徴なのか、訳文のせいなのかはよく分からない。終わり方は賛否両論あるだろう。あってしかるべき終わり方だ。個人的には最後の最後でハードさが失われた気がした。しかし、そこも含めて、やはりこの人は面白い。<氷と炎の歌>シリーズの3・4とが早く文庫にならないか、と心待ちにしているのだが、2が文庫になってから既に4年が経つ。ハヤカワは最近シリーズ物を途中で訳出を打ち切るというのが多くなったように感じているが、これもハードカバーの売れ行きがどうだったのか、あるいは、文庫での1,2の売れ行きが良くなかったのか、そろそろ諦めてハードカバーで購入しなければならないのかな...。
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by invox | 2011-07-19 09:42 | ■Books
「闇の船」(Darkship Thieves)サラ・A・ホイト(著) 赤尾 秀子(訳)

e0006365_23585486.jpg久しぶりにジュブナイル的なSFを読んだ気がする。買ってから読み始めるまで気が付かなかったが、冒頭の献辞がハインラインに捧げられていた。訳者については良く知らなかったが、ハヤカワでのほかの訳書を見ると、SFと児童文学でいずれも少女達が主人公の作品を得意としているようだ。

で、感想。とても面白かった。直接的にイメージがハインラインのジュブナイルSFを想起させ、とりわけ「ポディの宇宙旅行」(今は「天翔る少女」か。これはごく最近、この同じ訳者で新訳版が出ている。以前の版はタイトルは違えど、中村能三 訳。私が読んだことがあるのはこちら)を連想させる。主人公の性格や家庭環境の設定がそうさせるのだろうか。そこに今風の科学技術的要素を取り入れたとでも言えばいいだろうか。ハイパー・バイオ・テクノロジーの成れの果てを扱ったダン・シモンズの「イリアム」シリーズよりはかなり単純な設定にしてあるが、結局科学技術の発展と人間の発展とのアンバランスを根底においた舞台設定。この辺もハインライン的だ。

ガジェット的な小物の名前などにハインライン作品からの引用があったりもして、ハインライン好きには結構楽しめる作品である。結構面白く読めた。他にも読んでみたいと思ったが、訳出されているのは現時点ではこれだけのようだし、他の多くの作品はSFではないようだ。

あぁ、本屋さんで「天翔ける少女」の新訳版を見つけてしまったので、買ってしまった。で、今読んでいるところ。
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by invox | 2011-05-13 00:02 | ■Books
「輝く断片」シオドア・スタージョン 著、大森 望 編

e0006365_17215914.jpg“取り替え子”
“ミドリザルとの情事”
“旅する巌”
“君微笑めば”
“ニュースの時間です”
“マエストロを殺せ”
“ルウェリンの犯罪”
“輝く断片”

う~ん、何という短編小説集だ。引き込まれてしまった。かなり陰鬱な雰囲気が濃厚な作品もあるのだが、なんというか、醜さの中の美というか醜さという美と言うべきか。軽妙なコミカルさがグロテスクな重厚さを内包している。もし強引に言うならば、不条理漫画とも共通するようなシニカルな笑いがあると言えるだろう。しかし他の作家と決定的に異なっているのは、切なさだろう。これほどの切なさを文章で表せる作家を他に知らない。それは主人公の困惑や戸惑いとして現れて来ることも多い。

同じ河出書房から出ている「海を失った男」や「不思議のひと触れ」も面白かったが、インパクトの強さという点では本作が一番だと感じた。それは「蒼さ」とでも言うべきものの強烈さなのかもしれない。「マエストロを殺せ」での「だぶー、だべい」と「ふー、はっ」はずっと耳に残っている。

なお、11月には、同じ河出書房から『[ウィジェット]と[ワジェット]とボフ』(編:若島 正)も出るというので、そちらも楽しみだ。
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by invox | 2010-10-23 17:20 | ■Books
「ハンターズ・ラン(Hunter’s Run)」ジョージ・R・R・マーティン/ガードナー・ドゾワ/ダニエル・エイブラハム
酒井 昭伸(訳)

e0006365_23574358.jpgジョージ・R・R・マーティンの名前に惹かれて購入したものの、解説を読むと、どうやら他の二人の比重も拮抗している。というか、一番若手のダニエル・エイブラハムがいなければ、この作品は埋没していたのではないかとも思われる。取っ掛かりから刊行まで野の時間が長すぎるほど長い。

とは言え面白い。主人公の設定がそもそも面白い。こういった合作小説は音楽でのアンサンブルにも通じるものがあるのかもしれない。互いの持ち味を生かしながらも全く新しいテイストが出ているように思えるからだ。最初は冗長かと思われた展開もないとは言わないが、何かしらタイム・トラベル的な感覚をも持ち合わせた不思議な作品に仕上がっている。

「自分」というものが、実は「人工物」だったら、という非常にショッキングな設定が最初から施されているのだが、それが分かるまでの推移も面白い。自分と「双子」との関係や、相克を描きながらも、ウエットではなく、ハードな展開を見せてくれる。こうして自分が誰かのコピー/複製/レプリカ/再生品だったら、と仮定してみると、「自己」というものが如何に頼りないものか考えさせられる。「自己」を自分はどうやって規定しているのか? 自己は自己として独立してありうるのか。そんな疑問を抱きながらも、エンタテイメントは進んでいく。
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by invox | 2010-08-03 00:00 | ■Books
「ラブリー・ボーン」アリス ・シーボルト (著), イシイシノブ (訳)

e0006365_1862834.jpg映画ではなく小説の方。映画館で予告編を見て気になっていたので、本屋さんの平台においてあった本をつい買ってしまった。なかなかに面白い。軽い口調、ヘヴィな内容。軽快なテンポと重いシチュエーション。簡単に言ってしまえば、そういうバランスが不可思議な魅力となっている。様々な登場人物の大半は女性。作者も女性。男性読者と女性の読者とで、この小説をどう思えるのかに違いがあるようにも思うが、私はとても強い印象を受けた。

ピーター・ジャクソン監督の映画の方は見ていないので、何とも言えないが、主演のシアーシャ・ローナンは評価が高いようだ。以前見た映画「つぐない」にも出ていたというのだが、予告編で見たときは同じ女優さんだとは分からなかった。映画の音楽はブライアン・イーノが担当している。う~ん、やっぱり見てみたいかも。
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by invox | 2010-02-13 18:07 | ■Books
「ヘリックスの孤児」(Worlds Enough & Time)
ダン・シモンズ(著) 酒井 昭伸(訳)嶋田 洋一(訳)

e0006365_23193847.jpg1. ケリー・ダールを探して
2. ヘリックスの孤児
3. アヴの月、九日
4. カナカレデスとK2に登る
5. 重力の終わり


「ハイぺリオン」「エンデュミオン」の世界での後日譚を中編に仕立てた表題作ほか、全5作品を収めるアンソロジー。表題作のほかに、「イリアム」というシリーズに連なる中編(短編?)も含まれている。著者自身による序文が各作品毎に付けられている。読み応えたっぷり。

「イリアム」ってなんだ?と思っていたら、2006年以降単行本で出ているシリーズらしい。そちらは未読。学生の頃に読んだ「カーリーの歌」がおまり好きではなかったため、ハイペリオンも最初は、まぁ読んでみるか、程度から始まったのだが、見事ヒットした。なので、本アンソロジーも面白かった。いろんなところで、既出作品が多いとか、ハイペリオン・シリーズを読んでないから分からんとかつまらんというコメントも見たが、まぁ読書は時の運とも言うくらいその本と出会うタイミングが重要なので、他人の書評を頼りに読むくらいなら本屋で立ち読みで少し読んでみてから買えと言いたい。シリーズ物の番外編を読むのに本編を読んでいなくても楽しめる、というのは、意図的に作者がそれを独立した作品として完結させようとした場合でも上手くいかないことが多いのだから、それを理由に面白くないと言うのは馬鹿げている。勝手に文句言ってろという感じだ。

私の手元には、やはり随分と昔に購入した「SFの殿堂 遙かなる地平」(全3冊)がまだある。その中に、この表題作も含まれているが、私はすっかり内容を忘れてしまっていた。それを読んだ当時は、ハイペリオンなど読んでもいなかったからだろう。全く印象に残っていない。この作品が収められているのは第2巻なのだが、どうやら私はグレッグ・ベアのみを目当てに第2巻を読んでいて、他の作品をほとんど読んでいなかったようだ。読み返してみよう。

表題作が圧倒的に構築された世界を背景としたものであり、すでにその世界を部隊としたより壮大な物語を読んでいるだけに、他の作品は、まったく別の読み方となった。感動的な、という感想がいちばんこの本を表しているだろう。どの作品も違った形だが、ジンと来る終わり方になっている。毛色が異なっているとしたら「アヴの月、九日」だろうか。これが件の「イリアム」シリーズらしいのだが、読んでいないのでそこに張られているだろう伏線が一つも見えてこない。独立した作品としてはそれなりに面白いのだが、より大きなものの一部という感じがしてならない。
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by invox | 2010-01-27 23:20 | ■Books
「ソフィー」ガイ・バート(黒原敏行 訳)創元推理文庫

以前、TVで見た映画「穴」の作者の作品だという紹介文を見て驚いた。「穴」は原作(「体験の後」と「穴」で訳出されている)を読んでいないので、映画の印象しかないが、かなり面白かった。なので、「早熟の天才」「魔術的小説」などと書かれている煽り文句よりも、そちらが決め手となって購入した。

e0006365_23361053.jpg二人の会話と独白、回想と現在という場面の混在は、今では珍しくない手法だと思うが、これが発表された1994年ではどうだったのだろうか。まだ、映画やTVドラマもさほどアクロバティックな場面展開を多用していなかったようにも思えるのだが。その手の時間と空間、視点の入れ替わりの激しいものが増えてきたのは90年代後半からだったように思う。それはまずSF映画から始まったのではないか。あるいは、もっと以前に、SF小説の中でそういった手法を用いた作品がクローズアップされ始めたのが先かもしれない。めまいを起こしそうな感覚とでも言うのだろうか、自分自身のいる場所・時間というものの感覚がおかしくなっていくような感じを読むもの・見るものに与える作品が随分と増えたものだと思う。

ソフィーという少女は、一人称で登場するが、登場しない。マシュー(マティー)による物語りが続く。それは容易に「映像化したくなる」だろうものだ。そんなイマジナティヴな回想シーンが壊れていく後半はちょっと残念だ。もう少し落とし方を工夫する余地はあったのではないかと感じた。少し性急に終わらせた感じがした。他にもう一作だけ、小説作品があるようなので、訳出されればぜひそれも読んでみたい。
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by invox | 2010-01-06 23:36 | ■Books
「不思議のひと触れ」作:シオドア・スタージョン/訳:大森 望(河出文庫)

これはまた、これまで読んだほかの作品とは異なる手触りの本だ。スタージョンの作品の中でもちょっと変わっている作品ばかりなのかもしれない。それは、スタージョン「らしさ」をどう感じているかにもよるのだろうが、私にとっては、新しい一面を見せてくれた。

e0006365_18312024.jpg「高額保険」
「もうひとりのシーリア」
「影よ、影よ、影の国」
「裏庭の神様」
「不思議のひと触れ」
「ぶわん、ばっ!」
「タンディの物語」
「閉所愛好症」
「雷と薔薇」
「孤独の円盤」

全部の作品が面白かったのだが、ジャズのドラマーの話を描いた「ぶわん、ばっ!」が、スタージョンが音楽ものを書くんだという、意外でもあり、嬉しくもあり、とても楽しめた。「不思議のひと触れ」や「閉所恐怖症」、「孤独の円盤」はロマンティックな物語で、あまり意外性がないという意外性が逆に面白く読めた。「もうひとりのシーリア」や「裏庭の神様」は、日本人の作品かと思うほど身近な感じで楽しめた。これは、逆に日本人で影響を受けた作家がいるのかもしれない、とも思わされた。いずれにせよ、スタージョンのデビュー作など、いろんなものを書いているんだなぁというのが良く分かった。ハードカバーにも手を出すか。
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by invox | 2009-12-26 18:31 | ■Books