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Official inVox Blog; Watched, Read and Listened in my real life.

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コントロール」 (2007年 英/米/濠/日)
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監督:アントン・コービン
出演:サム・ライリー、サマンサ・モートン、アレクサンドラ・マリア・ララ、ジョー・アンダーソン、トビー・ケベル

e0006365_22561821.jpgうたい文句は「伝説のミュージシャン、イアン・カーティスの光と影を描く感動ドラマ」。ジョイ・ディヴィジョンの名前は知っていても、リアル・タイムではアルバムを入手できなかったし、初めてその楽曲を聞いたのはポール・ヤングがカバーした「love will Tear Us Apart again」だった。ニュー・オーダーとなってからの音は、それでもFMラジオでヒット曲がかかっていたが...。

それはさておき、ジョイ・ディヴィジョンは若かったんだ、ということをあらためて感じた。後追いで聴くことの不利な点の一つに、バンドを「過去」として捉えてしまうことがあると思う。「過去」として捉えてしまうと、どうしても、年齢的なところで自分よりもかなり年上のメンバーたちという先入観ができてしまう傾向が私にはある。たとえ今でも、ね。映画の中でバンドは十代後半で登場し、20代頭で終わってしまう。そこにリアルな人間を感じたのは事実だ。

e0006365_22572217.jpgイアン・カーティスという人物が職業紹介所に勤務していた、というのも初めて知った。バンドの他のメンバーも含めて、根が真面目な人物であったのだということも。もちろん、高校時代のエピソードなどもあるが、あの時代だからそれは珍しいことではなかったのだろう。この職業紹介所での訪れる人々との対話の場面も少なからず描かなければならないものであったのは間違いない。それが彼にとっての一つの現実の生活だったのだから。

驚いたのは、イアン・カーティスが癲癇を患っていたということだ。薬の副作用が述べられる場面を見ていると、もし彼が癲癇でなかったら、薬の副作用がなかったら、自殺はなかったのか? という疑問もわいてくる。早すぎた結婚と、癲癇の発作への恐怖と、ツアーの重圧。薬の副作用。妻との感覚がずれていくという実感。愛人への逃避。「もうコントロールできない」と呟く。さまざまな葛藤が描かれていく。原作は、イアンの妻デボラ・カーティス。もし、イアンが生きていたら51歳か。生きていたらどんな音楽を作っていただろうか。それとももはや音楽活動をやめていたのだろうか。

「伝説のフォトグラファーで、PV監督」のアントン・コービン初監督作品だということだが、たしかに、実際にリアルタイムでバンドを写したのと同じモノクロで最後まで通した映像は、とても印象的だった。バンドのライブシーンも多用されるが、音楽そのものに焦点が当てられているわけではない。歌詞にはかなり重きが置かれていたが。やはり「歌」では歌詞の「意味」に注目が集まるのは仕方のないことなのだろうか。多くのバンドの楽曲が使用されていたがどれも全曲を完全に流されることはなかった。ライブ・シーンの描かれ方と相俟って、これはフラストレーションがたまる。もっと音楽そのものにに語らせろ。

バンド結成以前のイアンの部屋のシーンで机の上に「Novels」「Poems」「Lyrics」という三冊のファイルが並んでいるのが映し出された。ワーズワースの詩を暗誦する場面も。部屋にはデヴィッド・ボウイー、ルー・リードのポスターが貼ってあったし、セックス・ピストルズのライブを見に行くシーンや、バズコックスをこき下ろすせりふなど、にやりとする場面もある。「バンドのメンバー、ピーター・フックやバーナード・サムナーを演じた俳優の“そっくり”ぶりにも要注目」だと宣伝文句にはあるが、残念ながら私はオリジナルを知らない。

ジョイ・ディヴィジョン、やはり一度きちんと聴いておかなければならないか。
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by invox | 2008-03-31 22:57 | ■Cinema/Movie
「ウルビーノのヴィーナス 古代からルネサンス、美の女神の系譜」国立西洋美術館

ウルビーノのヴィーナス
「ヴィーナス」ばかりを集めた展示会ということで、ちょっと珍しかったのだが、こんなにも多くの「ヴィーナス」作品があるとはねぇ。古代ギリシア時代のものから、ローマ時代、ルネサンス期と時代はさまざまなもので、それぞれに裸体であったり、ちょっとだけ隠すための布類があったりと時代の文化的な背景を感じさせる変化が面白い。大きな作品もいろいろあって、1テーマに絞った展覧会にしてはバラエティに富んでいた。

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by invox | 2008-03-30 18:38 | ■Arts
「エリザベス:ゴールデン・エイジ」 (2007)

1作目は見ていないので何とも言えないが、本作は楽しめた。メリハリのある歴史エンタテイメントだ。惜しむらくはメアリ・スチュアートの存在感の低さか。エリザベス暗殺の企てがどうも薄っぺらだった。各国からの求婚の儀式は、本当に政略結婚ってこんなにも馬鹿馬鹿しくも真剣に行われていたのだなというように妙に感心してしまった。大変だったのだなぁ、と。

e0006365_2281052.jpgスペインの無敵艦隊(通称アルマダ)は、艦隊の規模は大きいが、イギリス上陸を前提としていたため、兵の3分の2以上が陸軍兵だったとのことで、敵船に接舷して乗り込んで白兵戦を行うという伝統的な戦術は得意だが、海上での艦隊戦は不得手だったようだ。これに対してイギリスは海賊上がりのドレーク船長が艦隊の指揮を執り、大西洋の荒波に耐えるよう設計改良された艦隊は、結果としてスペイン船よりも船足が速く、また、その後の主流となる「帆船」であったため、こぎ手を必要としたスペイン船よりも安定した操舵性を持っていたといいます。さらに、スペイン艦隊の海戦経験は、主にそれまでは地中海に限られていたようで、大西洋の荒れる海に手こずったという説もあります。

いずれにせよ、映画は映画だし、フィクションが混じっている。史実に忠実ではないだろうし、それ故に面白くもなっているだろう。映画って面白い。
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by invox | 2008-03-29 22:08 | ■Cinema/Movie
Becoming Jane」  (2007 イギリス/アメリカほか) 

監督:ジュリアン・ジャロルド
出演:アン・ハザウェイ(ジェーン・オースティン)
  ジェームズ・マカヴォイ(トマス・ルフロイ)
他にマギー・スミス、ジュリー・ウォルターズなど

e0006365_065683.jpgジェーン・オースティンという名前は知っていたが作品は読んだことがない。近年の「プライドと偏見」という映画が彼女の本「高慢と偏見」の再映画化だというのは聞いていたが、映画そのものは見ていない。この映画はジェーン・オースティン(作家として有名になる前)の若き日の恋を描いたもの。ただし、かなりの脚色がされているとの噂だ。真偽のほどは知らない。

夢見る乙女、というのとはちょっと違っているかもしれないが、自身の才能や感受性に自信を持ち、時に自惚れているとも取れるほどのプライドを持つ若き女性。だが家柄は良いが貧乏、男兄弟が多いことから男勝りの気性と鼻っ柱の強さ。時代的な背景を考慮すると、何よりも礼節(マナー)を重んじる文化が新しい時代へと変わろうとしている頃。馬鹿丁寧とさえ見える挨拶のスタイルにその文化背景が象徴されている。

堅苦しい時代の中で、小説は下品なものであり、文学は男のものという常識が強く幅を利かせており、それでも徐々に変化の兆しが見え始めている。自分自身がその変化そのものであることは大変つらいものだと思う。それでも前に進まずにはいられない。それが自分にとっての真実を追い求めるという信念を持つことだ。
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by invox | 2008-03-28 00:08 | ■Cinema/Movie
大いなる陰謀Lions for Lambs)」 (2007 アメリカ)

メリル・ストリープが57歳のベテラン記者、トム・クルーズが共和党の期待の新鋭上院議員、ロバート・レッドフォードがベトナム戦争を経験した大学教授という役割で、大きく二つの物語を並行して演じるというもの。監督がロバート・レッドフォード。

e0006365_22473638.jpg戦争というものの意味をもう一度考えてみることが必要だということが政治家とマスコミ、教育現場の教える側と教えられる側という二つの対峙する組み合わせの中で話される。そう、この映画のもっとも顕著な特徴は「対話」である、ということだと思う。対話の中でそれぞれのものの見方が伝えられ、議論され、伝わったり伝わらなかったり。政治と教育という大きなシステムがもつ矛盾と希望。それを伝えることの難しさ。政治が権力ゲームになることの何と容易いことか。教育が力を失うことの何と簡単なことか。そして、現実の何と認識されづらいことか。現実が報道されることが現実性を奪ってしまっているとも言えるだろう。戦争もテロもTVで見ている限りでは映画やドラマとなんら変わらない程度の現実味しか感じない。それよりももっと「現実的な」就職や成績、年収などが学生たちの頭の中を占めている。それが「現実」。

気づく人間は少なからずいるだろう。そして行動を起こす人間も。それでも、そうすることが、世間から距離を置かれることに直結することも事実だろう。別に戦争や「正義のための戦い」ということに限定しない。「現実」を直視し、それに立ち向かうということを実践する人間は、しない人間から嫌われる。疎まれる。攻撃されさえする。
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by invox | 2008-03-26 22:47 | ■Cinema/Movie
90歳だったというアーサー・チャールズ・クラークがスリランカの自宅で亡くなったそうだ。近年は若い作家とのコラボレーションも意欲的にやっていただけに残念。

全邦訳を集めているわけでもないが、それなりに好きで、物の見方については影響も受けている。ゆっくりと未読作品を読んでいきたいと思っていたところだった。

中学の頃だったかに「都市と星」「銀河帝国の崩壊」を読み比べてみたりもした。これらはとても好きな作品で、近年のグレゴリー・ベンフォードとの共著という形を取った「悠久の銀河帝国」も読んだ。「幼年期の終わり」は「地球幼年期の終わり」というタイトルのもので読んだ。「海底牧場」はずいぶんと後になって読んだがとてもよかった。

クラークというとずいぶんとアカデミックな印象がある。ほかの作家が「科学的な」正確さや論理性のある記述において劣っていると言っているのではなく、ほぼ間違いなく語り口の問題だろう。翻訳の仕方かもしれないが、クラークは精緻な表現で整然としたクールな印象があるのだ。その辺もまた魅力の一つだろう。

思い出すのは、大学時代、当時出たばかりの「2010年」が読みたかったがハードカバーでは高くて買おうという気にならず、立ち読みで何回か通って読み通したことだ。そんなことを舌のは、後にも先にもこの時だけだ。クラークの「2001年」の続編が出た!という興奮がそうさせたのだろう。まさか、その後もシリーズが出るとは思っていなかった。
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by invox | 2008-03-24 23:36 | ■Human
「すべては音楽から生まれる」茂木 健一郎 (PHP新書 497)

アハ体験などで有名な茂木氏の本。タイトルに惹かれてつい買ってみた。基本的には「書いた」のではなく「語った」ものを書き取って整理したもののようだ。

ここで語られていることの多くは、「音楽はすべてに優先する」という私自身の信念と共通の体験である。音楽は言葉や数式や、目に見える「形」にすることの出来ないものであるという基本的な事実に基づいて、それゆえに人の心を動かすことが出来るものの中で最高の位置を占めている。

e0006365_2371692.gif茂木さんという人は、脳科学の第一人者であるという認識だったのだが、彼もまた「音楽に心酔する人」なのだということが、この本では強く伝わってくる。脳内活動を指して、ニューロンとシナプスのによる情報伝達の在り様はまるで音楽そのもの、交響曲のようだと言う。人間の思考、脳活動が音楽と同じだという。人間は身の内に音楽をそもそも有しているのだという。

ここで取上げられる音楽の多くはクラシックであるが、本人は歌謡曲からラップまで幅広く音楽を聴いていると言っている。ちあきなおみの例が引かれている。

文章そのものの密度は高くない。語られたものを文字に仕上げていったのだから当然だろう。繰り返しに近い部分もある。回りくどく感じられる部分もあるかもしれない。にもかかわらず、この本は音楽の捉え方について、大いに共鳴しうるものを文字という形で表している。音楽なのに、だ。

目で見たり、触ったり出来る形に出来ないもの、文字や数字に還元できないもの、その存在を保持できないもの。一瞬で消えていくもの。これら音楽の本質が「クオリア」なのだという。科学や数学を究めた上で、それらに還元できないものこそが人間にとって最も重要なものなのだという主張を、ここまで積極的に、自信を持って出来るのは、これが事実だからである。と私は信じている。

私個人の意見を言えば、「考える」ということを狭義に「言葉で」考えることだとしか思っていない人には何もわからない。言葉の不自由さ、言葉の不十分さを知る人は、言葉を極めた上でことばではないものの重要性を知っている。人間は目で考え、耳で考え、肌で考え、舌で考える。言葉は伝達のために生まれた稚拙で未熟な手段でしかない。そして人間は、そんな言葉でさえも使いこなすことが出来ないのだ。

後半は、イベント「ラ・フォル・ジュルネ 2008」の宣伝みたいなものだが、「本物の音楽」を気軽に楽しめるイベントとして、最適なイベントとして紹介されている。茂木氏自身がアンバサダとなっているほどお気に入りのイベントのようだ。
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by invox | 2008-03-23 23:07 | ■Books
マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋」(2007 アメリカ)

監督:ザック・ヘルム
出演:ナタリー・ポートマン、ダスティン・ホフマン、ジェイソン・ベイトマン、ザック・ミルズ

e0006365_071936.jpgナタリーポートマンが予告編の中ではとてもかわいかった。魔法を使えるおもちゃ屋のオーナーがある日突然引退「死」を予告する。後継者はまだ23歳の、オリジナル作品を作れなくて悩んでいるピアニストになりきれない女の子。そう、これもある種の音楽映画かも。音楽は味付け程度だけどね。

いまひとつ主題がはっきりしないのと、それぞれ役の役割がピシッと来ないのとで、なんとなくよかったけど、なんとなくすっきりしなかった映画だ。もうちょっと違う作り方も出来ただろうに、とつい思ってしまった。飛行機の吹替は、最悪だったからかもしれないが...。映画館で、字幕で見ればよかった。
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by invox | 2008-03-22 00:08 | ■Cinema/Movie
「兵士の物語2008」 

*カノンホールオープン記念企画
「兵士の物語2008」(ストラヴィンスキー 1918-2008)

これに行かねばなるまい。と、密かに誓いを立てる。春の日のうららかならんことを。

時:ストラヴィンスキー没後37年目となる4月6日、
人:
 - クラリネット / 鈴木生子
 - ヴァイオリン / 相磯優子
 - ピアノ/ 浦壁信二
 - 「兵士の物語2008」朗読 / 飯原道代

e0006365_14333163.jpg<オール・ストラヴィンスキー・プログラム>
- ソロ・クラリネットのための3つの小品
- イタリア組曲(ヴァイオリンとピアノのための)
- 「兵士の物語」(クラリネットとヴァイオリンとピアノと朗読による)


・開演/4月6日(日)15時・・・開場14時30分
・入場料金/3000円(ワンドリンク付)
  チケット取り扱い/カノン工房 office@atelier-canon.jp
・会場/カノンホール 080-5178-1419(当日のみ通信可)
・主催/カノン工房



以前見た、7人編成のバージョンとの違いもとても楽しみだ。トリオ・バージョンもストラヴィンスキー本人が編曲したものを土台としているというからね。
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by invox | 2008-03-21 14:33 | ■Music
「August Rush」(2007 アメリカ)

e0006365_2105926.jpg出演:フレディ・ハイモア、ジョナサン・リス=マイヤーズ、ケリー・ラッセル
監督:カーステン・シェリダン

飛行機の中で見た映画のうち、もっとも能天気なハッピーエンドだったにもかかわらず、もっとも背中がぞくぞくっとした作品。ストーリーは、ロック・ミュージシャンとジュリアード卒の転載チェロ奏者にして両家のお嬢様の出会いと別れ、再会の物語を、その中で生まれた男の子の物語を中心にして展開していくというもの。この男の子の天才振りが度を越していて痛快なほどなのだが、彼らに共通するのが「音が聞える」ということだ。どこにいるのかも、誰なのかも知らない家族同士が、耳を澄ますとどこからか音楽が聞える、というファンタジーな設定が気に入った。そうだ、音は聞えるのだ。
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使用されている音楽は様々だがヴァン・モリソンが複数回使われていた。オリジナル・スコアはアコースティック・ギターのタッピングを多用したものをベースにパーッカションの使い方が割りと新鮮で気持ちがよく、そこにクラシックやゴスペルが組み込まれていくというハイブリッドなものだが、聴いていて違和感なく心地よかった。もう少し演奏シーンを増やしてもよかったのではないかと思うくらいだ。

主な登場人物は、みな音楽が好きな人間ばかりで悪人はいない。最後はハッピーエンド、主人公たちはみな天才。久しぶりに能天気に感動した。こんな映画を作れるのはアメリカならではなのかも。でも、監督はアイルランド出身で女優でもあるそうだ。ハリウッド初進出作品。日本公開は6月21日。邦題は『奇跡のシンフォニー』。一つだけ難癖をつけるとしたら、主人公のエヴァンの演奏シーン。あまりにも下手糞なのに手元だけを写すときだけすごいプロフェッショナル。出てくる音と手の動きが違和感ありすぎだった。
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by invox | 2008-03-21 02:19 | ■Cinema/Movie