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Out of My Book

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Official inVox Blog; Watched, Read and Listened in my real life.

「ナルニア国物語 第3章 アスラン王と魔法の島」(The Voyage of the Dawn Treader)

どうしても今回の映画タイトルではなく、「朝びらき丸、東の海へ」と言ってしまう。英語は同じなのに邦題が違うと戸惑いがある。

「ナルニア国物語」も三作目。本当に七作品とも映画化するのだろうか、という疑問も、そろそろもう一度湧いてきたところだ。原作では5作目以降に少し散漫な印象、あるいはいかにもキリスト教的な説教臭さを感じたせいもある。まぁ、元々アスラン=キリストをイメージした作品なので仕方ないのだろうが、それでも子供向けとは言え、教条主義的な印象が、最初の2作ではそれほど感じなかったのに、3作目以降、どんどん強くなっていくような感じだ。

原作のタイトルは直訳すれば「ナルニアの年代記」となるが、原作の発表準は年代に従ってはいない。年代順に並べると『魔術師のおい』(6)、『ライオンと魔女』(1)、『馬と少年』(5)、『カスピアン王子のつのぶえ』(2)、『朝びらき丸 東の海へ』(3)、『銀のいす』(4)、『さいごの戦い』(7)の順番となる。なので、勝手に憶測で言うならば、1作目、2作目を書いた後、勢いで4作目までいったは良いものの、年代記としての奥行きや、整合性を取るために間の2作を書いたのではないだろうか。そのため、「馬と少年」は「さいごの戦い」の前に書かれなければならなかったし、終わり(黙示録)を描くだけではなく「魔術師のおい」で始まり(創世記)を描かなければならなかったのではないか。

第3章での主題は「冒険」ではなく、「悪魔の誘惑」とそれに打ち勝つこと。キリストが砂漠で悪魔の誘惑に打ち勝ったように、子供達とカスピアンは誘惑に立ち向かっていく。さいごは自分自身が生み出した怪物を打ち破るのに、アスランの7本の剣(これが、信仰、ということなのか)を取り戻し、自らの手で怪物を倒す、という、信仰を持って自らの弱い心を克服する、という流れだが、映画はエンタテイメントに徹しており、余分な説明は(少なくとも台詞という形では)ほとんど感じられないがゆえに、大アドベンチャー・ストーリーに仕上がっている。

第1作、2作と違い、ウォルト・ディズニーが手を引いたため、第3作は20世紀フォックスの配給となっている。はたして、第4作以降は作られるのだろうか? 興行成績が悪ければ、これで最後かもしれない。残りも全部とは言わないが「銀のいす」と「さいごの戦い」は作って欲しいなぁ。
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# by invox | 2011-03-11 22:18 | ■Cinema/Movie
アンサンブル・ヴィーヴォ2011公演
「西洋の目、東洋の声 ~ フランス音楽アカデミーとアジアの作曲家~ 」


e0006365_2381688.jpg・2011年3月1日(火)
・けやきホール(古賀政男音楽博物館内)
・演奏:鈴木生子(クラリネット)
    中澤沙央里(ヴァイオリン)
    大須賀かおり(ピアノ)

 1. 「悟り」(cl)(アラン・ゴーサン)
 2. 「黒の悪戯」(cl, pf)(阿部 俊祐)
 3. 「トウキョウ・シティ」(p)(アラン・ゴーサン)
 4. 「呼吸(いき)I」 (cl)(金子 仁美)
 5. 「微動」 (vl)(ハン・ジョンフン)
 6. 「トリオ」 (vl, cl, pf)(パク・チャンウォン)

久しぶりの現代音楽。フランス、日本、韓国の作曲家の作品だ。一番面白かったのはラストのトリオ編成での「トリオ」。指揮者はおらず、3人のアンサンブルの指揮を執っていたのはクラリネットのように見えた。演奏力においても実力差があるように感じたのは気のせいか。そう感じた理由は音量。いや、音量というよりも、ダイナミック・レンジという言葉の方がしっくり来るか。クラリネット以外の二人は、小さな音と大きな音の差が少ないのだ。そのため音楽の表現の奥行きが浅くなっていたように感じた。プロフェッショナルとアマチュアとの一番顕著な差がこのダイナミック・レンジの広さだと思う。演奏は上手いだけに、パワー不足がもったいない。

以前NHK教育でたまたま見かけたリチャード・クレイダーマンによるピアノ指導の番組でも、生徒が弾いた後にクレイダーマンによる演奏を聴くと、その音の大きさの違いにとても驚かされた記憶がある。クレイダーマンの音楽が好きだった訳ではない私にとっても、そのように感じられたのだ。大きな音をより大きく演奏できるということは、中間の音の表現に微妙な階調を付け加えることが出来るということだ。プロを目指す人に対するアドバイスに「出来るだけ大きな音を出して練習しなさい」というのがあるが、それは、小さな音でばかり練習していると、その中での表現に終始してしまい、表現のダイナミクスや肌理細やかさが貧弱になってしまうからだと聞いたこともある。この二人の演奏を見ていて、そんなことを思い出した。

それと、日本人の作品2曲は、フランス、韓国の4作品に比較して音学の度合いが高く感じた。特に最後の「トリオ」は音楽度が一番高かったように思う。私がこの曲を気に入ったのは、それが理由だったのかもしれない。


さて、次は今月末頃のB&B公演だ。こちらはより強力なピアノが加わることが分かっているので大変楽しみである。どんな漫才を見せてくれるのだろうか?って違うってば。

●鈴木生子Clarinet recital series 2
 「ピアノ、クラリネット、チェロのための・・・B&B」
e0006365_2383710.jpg
 - クラリネット/鈴木生子
 - ピアノ/浦壁信二
 - チェロ/松本卓以

【プログラム】予定曲目は変更になる可能性があります。
 1. ブラームス「ピアノ、クラリネット、チェロのためのトリオ 作品114」
 2. ベートーヴェン「ピアノ、クラリネット、チェロのためのトリオ 作品11」

開  演■2011年5月20日(金) 19時開演(18時30分開場)
入場料金■3500円  
会  場■淀橋教会小原記念チャペル
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# by invox | 2011-03-04 23:08 | ■Music
川崎のクラブ・チッタがこのところ活発にプログレ関係のライブを行っている。昨年のオザンナは私にとっては大変嬉しい企画だった。夏のハケット、ルネッサンス、四人囃子のフェスティヴァルも盛況だったと聞く。残念だったのは、フラヴィオ・プレモリ&マウロ・パガーニの公演が中止になったことだったのだが、その代わりに今年、アレア+マウロ・パガーニでの公演がセットされた。二日間の公演だが、一日だけ見に行くこととした。

ホークウインドは、去年のクラウス・シュルツェ以上に「まさか」の来日だ。ティム・ブレイクもメンバーだし、見てみたい気はするが、いかんせんアルバムは3枚しか聞いたことがない上に余り気に入っていない。見送ることにした。ラッテ・エ・ミーレも、アルバムは2枚ともLPで聴いているが、印象にはあまり残らなかった。これもパス。問題はエディ・ジョブソンジョン・ウェットンによるUK名義の公演。ドラムスとギターにはエディ・ジョブソンのバンドのメンバーらしいが、UKZも聴いていないし、どうもエディ・ジョブソンの活動がお金目当てに見えてしまっていまひとつ、よし、行こう!という気になれない。後で後悔しそうだが、それでも躊躇してしまっている。さて、どうしたものか。

ホークウインド 
   2011/04/09 (土) /10 (日)
     Dave Brock(guiter ,vocal,keyboards)
     Richard Chadwick(drums,vocal)
     Tim Blake(keyboards,vocal)
     Mr Dibs(vocal, base guiter)
     Niall Hone(guiter,bass,keybords)
     Laura McGee (dancer) / Stef Elrick (dancer)

UK
   2011/04/15 (金) /16 (土)
     Eddie Jobson(keyboards, violin)
     John Wetton(vocal, bass)
     Alex Machacek(guitar)
     Marco Minnemann(ds)

ラッテ・ミエーレ 
   2011/04/30 (土)

アレア+マウロ・パガーニ
   2011/05/07 (土) /08 (日)
     patrizio fariselli(keyboards)
     paolo tofani(guitar)
     ares tavolazzi(bass)
     walter paoli (drums)
     SPECIAL GUEST
     mauro pagani(violin/flute/vocals)
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# by invox | 2011-02-18 13:51 | ■Music
「モネとジヴェルニーの画家たち」Bunkamura ミュージアム

モネの「睡蓮」シリーズは、これまでに何作か目にする機会があった。中にはかなり大きなものを5,6枚、大きな一部屋のなかに並べて展示してあったものもあった。が、残念ながら「睡蓮」連作は私の好みではなかった。

e0006365_9361381.jpg今回の展示会では、彼の住んだジヴェルニーの地図や写真などもあり、また、同じ村に集い来た多数の画家達の描いた風景画なども多くあり、思いのほか楽しめるものであった。これは、という特別に気に入った作品はなかったのだが、割と良いなぁと思った作品がたくさん出てきたのにはわれながら驚いた。一つの作品の中での印象派的なものと写実的なものとのバランスが私の好みに合ったのかもしれない。

e0006365_9363562.jpgそうは言っても、出場後の物販コーナーには、これと言って買い求めたい絵葉書がなかったのは残念だった。それにしても、ジルヴェニーに集まったが形の七割がアメリカ人だったというのも意外だった。モネと言うといかにもフランス、オランダ的なイメージが強かったので、そのモネの影響を受けた画家達の多くがアメリカ人だったというのが不思議だった。だが、作品に見られる明るさや開放感は、モネとは少し違った方向性を持っているというのは当然として、自然光の解釈が少し異なっているように感じたのは面白かった。
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# by invox | 2011-01-26 09:36 | ■Arts
アレアが来る! しかも、マウロ・パガーニと一緒に!!

昨年末飛び込んできたこのニュースには正直驚いた。昨年5月にニュー・ヨークでこの組合せでのライブをやったのは知っていたが、実際にその音は聴いていない。デメトリオ・ストラトス、ジュリオ・カピオッツォという創設メンバー二人が既に故人なので、アレアと言っても、あの強烈な歌は聴けないのは分かっているが、それでも、マウロ・パガーニのバイオリンと、ファブリッツィオ・デ・アンドレ直系のボーカルが全く違う魅力を与えてくれるだろうことを、実はちょっとばかり期待している。また、ファッリセッリのキーボードにもちょっと期待している。それに、マウロ・パガーニのソロ作品からも演奏するらしいので、そちらは非常に期待している。

アレア(AREA)with マウロ・パガーニ(MAURO PAGANI)来日公演

≪来日予定メンバー≫
 - Patrizio Fariselli(kbd)
 - Paolo Tofani(g)
 - Ares Tavolazzi(b)
 - Walter Paoli(dr)
 - Mauro Pagani(vln/flute/vo)

 ・2011年 5月7日(土) OPEN 17:00 START 18:00
      5月8日(日) OPEN 16:00 START 17:00

チケット:¥8500 全席指定(各日限定600席)
一般発売:2011年1月22日(土):チケットぴあ、ローソンチケット、イープラス
主催・招聘・企画制作:クラブチッタ
後援:ストレンジ・デイズ、協力:ディスクユニオン

ということで、まさか!というべきアレア+マウロ・パガーニの来日公演です。

デメトリオ・ストラトスの死後、何度か再結成していますが、ドラマーのジュリオ・カピオッツォも亡くなってしまったので、追悼とか没後何周年といったイベント以外ではありえないと思っていましたが、昨年元アレアの3人にマウロ・パガーニが加わり、ドラマーのみよく知らないメンバーでニュー・ヨークでライブをやったというニュースを聞いたときは驚きました。しかし、まさか、日本に来るなんて信じられません。

今回の来日メンバーは、このクラシック・ラインアップから、既に故人となったデメトリオ・ストラトス、及び、ジュリオ・カピッツィオを除いた3人に、デメトリオとも親交の篤かったマウロ・パガーニがバイオリンとボーカルで参加。そして、セッション・ドラマーであるウォルター・パオーリが昨年の5月のニュー・ヨーク公演に続いての参加となるそうです。

AREA 1974-1979 Classic line-up;
- Demetrio Stratos - lead vocals, organ, steel drums
- Giulio Capiozzo - drums, percussion
- Patrizio Fariselli - keyboards
- Paolo Tofani - lead guitar, synthesizer
- Ares Tavolazzi - bass guitar, trombone

◆クラシック・ラインアップでのアルバム

 1974 - Caution Radiation Area
 1975 - Crac!
 1976 - Maledetti (Maudits)
 1978 - 1978 Gli Dei Se Ne Vanno, Gli Arrabbiati Restano!

ドラマーは昨年1月のボローニャでのデメトリオを悼むイベントの時とは違う人のようで、イタリアのセッション・ドラマーだとのこと。しかも、ボーカルはマウロ・パガーニだけ。最初からデメトリオがいないことは分かっているし、彼のボーカルと同じものを期待するのは絶対無理ですから、それはそれでがっかりすることもないのかもしれません。ただ、マウロ・パガーニも、

願わくは、トファーニとファッリセッリが思いっきりアレアらしく暴れて欲しいなぁ。マウロ・パガーニも「地中海の伝説」で見せてくれたようなアレアとの相性のよい演奏をして欲しいものです。NYでの公演では、アレアの楽曲以外に、パガーニの楽曲も演奏したというので、そちらも楽しみです。

○マウロ・パガーニ

 1978 - Mauro Pagani (「地中海の伝説」ソロ1作目)
 1981 - Sogno di una notte d'estate (「真夏の夜の夢」サントラ)
 1991 - Passa la bellezza (ソロ2作目)
 2003 - Domani (ソロ3作目)
 2004 - Creuza de ma (tribute to Fabrizio De Andre)(ソロ4作目)

1作目は、言わずと知れたイタリアン・ロックの最重要アルバムの一つ。デメトリオ・ストラトス参加ということもあって、日本でもこれにノックアウトされたファンは多い。NHKの英会話番組のテキストのようなジャケットも印象深い。

2番目のサントラは、「真夏の夜の夢」というタイトルで国内盤が出たが、1作目の延長を期待したファンには不評だった。これ以外にも、自分の名前を冠したサントラ作品があるようだが、全貌は掴めていない。私も以前1枚持っていたが、あまり良い作品ではなかったので手放してしまった。タイトルも忘れたが、SFチックな映画のサントラだったようだ。ちなみに、その映画は日本では公開されなかったというのは覚えている。

ソロ2作目と3作目は、私は聴いたことがないが、所有者のレビューを読むと、どうやらバイオリン奏者としてのパガーニは引っ込んで、イタリアの土着の音楽に根ざした作曲者、歌い手としての自分を前面に出しているようだ。それは、1984年のファブリッツィオ・デ・アンドレのアルバム「地中海の道程」に参加したことによる影響だと書かれていた。それが次のライブ・アルバムでもある4作目に結実しているのだろう。この作品は、ファブリッツィオ・デ・アンドレ+マウロ・パガーニの「地中海の道程」(1984)の完全リメイク(但し、ライブ録音)だそうで、パガーニのデ・アンドレに対する深い敬慕の思いを知ることが出来るアルバムだそうだ。

これら3作品では、マウロ・パガーニは完全にボーカリストであるそうだ。なので、ボーカリストとしてのキャリアはすでに四半世紀を超えていることになる。さて、アレアの楽曲との相性はどうなのだろうか。

そんなことを考えながら、本日、チッタのサイトで日曜日のチケットを申し込んだ。
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# by invox | 2011-01-08 17:13 | ■Music
あけましておめでとうございます。新年最初のお話として、David Jacksonがクリスマス前にイタリアへ出かけて帰ってきた際のとんでもない出来事をご紹介しよう。この話は、すでにイタリアのファン・グループ”PH&VdGG Study Group”のホームページにも紹介されているが、デヴィッド本人は、私が知らせるまでそのことを知らなかったようだ。たぶん、ジャンニが文章を流したのではないか、というのがデヴィッドのコメントだった。以下は、デヴィッドから送られてきたオリジナルのワードでの文章を訳してみたものだ。なにぶん英文和訳は素人なので誤訳がある場合はご容赦願いたい。

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●ア・ディファレント・クリスマス・ストーリー ~ ケース・スタディ
- by デヴィッド・ジャクソン

 - 私は、如何にして自分の楽器たちをなくしかけたのか、そして、どうやってそれらを再び手にしたか!



 昨年12月、クリスマスの1週間ほど前、木曜日に、私は、イタリアでのコンサートのため、いつものようにガトウィック空港からローマへとEasy Jet航空の飛行機で出かけていった。これもまた、いつものように、巨大で重い、サックス類とフルート、それに不可欠なアクセサリー類、例えばストラップやスタンドといったもの、道具類とリードなどがぎっしりと詰まったフライト・ケースを持っていった。その夜、O.A.K.というジェリー・クッティロのバンドとのリハーサルを行った。マーティン・オルコックと私は、「砂漠のクリスマス」と題された、ローマのヴィア・リベッタにあるアンチュ・ライブ・ミュージック・クラブでのイベントでのスペシャル・ゲストだったのだ。その晩のリハーサルは、長くて疲れたが、セットはエキサイティングで演奏はファンタスティックだった。

 金曜日がギグだった。サウンド・チェックの後に人々が到着し始めた。極めて素晴らしかったのは、そこにとても大勢の若い子供たちがいたことだった。ジェリーには魅惑的な8歳のイザベラという名の娘がいた。彼女は、大勢のクラスメイトやその兄弟、連れてきた親たち、それに友達によって握手攻めにあっていた。子供らは皆、赤と白のクリスマスの妖精の衣装を身に着けており、それで、いつものプログ・ロック・クラブのライブの典型的な夜ではないものとなった!イタリアでのライブ音楽はいつも夜遅いのだが、たくさんの人々が集まってきていた!彼らが食事をした後、子供たちはあたりを走り回り始め、一様に騒がしくなってきたのだが、もちろんかわいらしかったのだ。

 私は突然、子供たちに、私のバンドと一緒にやるオープニング曲「コルプス・クリスティ・キャロル」での最低限の合唱パートを教えて、一緒に演奏しようと思いついた。彼らは、この曲をあっという間に熱心に学んでくれた。彼らは思っていた以上に興奮しており、ショーの一部となって、ジェリーのバンドと一緒に演奏することにワクワクしていたんだ!私は、ガブリエレというよく知らないファンが子供たちをまとめるのに素晴らしい手伝いをしてくれた。私たちは、私の即興のソロの間に、完全なサプライズとして子供たちを登場させ、それはとても美しかった。もちろん、イザベラは父親と一緒にステージで歌ったし、妖精たちの合唱団はショーを掻っ攫っていった。それは、とてもエキサイティングな音楽のとても素晴らしい夜だった。

 土曜日、私は帰国の飛行機に乗ることになっていた。しかし、ガトウィック空港へのすべてのフライトはイングランドでのひどい雪のせいでキャンセルされてしまっていた。偶然、私が滞在していた海辺の町オスティアでも雪が降っていた。一人の老人が浜辺での写真撮影に参加していたのだが、彼が「ヒストリコ(歴史的だ)」と叫んだ。「ローマに前回雪が降ってから、25年ぶりだ!」と。

 私は、その便でうちへ帰って、家族とのクリスマスの準備をしたいと思っていたのでいらいらしていた。電話で、なんとか月曜日のフライトを予約できたので、代わりに、マーティンと私は素晴らしいイタリアの仲間ともてなしの週末を送らざるを得なくなったのだ。そう、それはこの世の終わりというわけではなかったんだ、この段階では。

 月曜日のフィウミッチノ空港で、私は自分の荷物をいつものようにチェック・インして、ジェリーがフライト・ケースをセキュリティのX線検査機に乗っけるのを手伝ってくれた。私はそれに手を振って別れを告げた。これまで何百回もやってきたように。そしてケースは出発口の中へと消えていった。

 いつものように、イージージェットでのフライトは機材と乗務員のたくさんの問題があり遅れていた。ガトウィック空港のバゲッジ・ホールに着くと、スーツケースはごく普通に出てきたが、フライト・ケースはただ現れなかった。私は随分長いこと探したのだがまったく落胆してしまった。その後長い列に並んでメンジーズ手荷物管理へとそがなくなっていることを届け出た。私はイージージェットのワールドトレーサー・サービスの番号をもらい、ケースは通常2,3日で見つかると言われたのだ。それが普通だ、と。しかし、そのバゲッジ・ホールは普通どころではなかった。ターンテーブルの間のどの通路にも放置された荷物が何千個とあったのだ。ひとりの地上係員の男性が人々を助けており、もう一人はガラスの向こう側にいた。

 飛行機から降りたときに滑走路を歩いてきたので、ガトウィックの天候が再びとても悪くなることは分かっていた。2時間半ほど探してから、私には自分のバンに乗って、ひどく降りしきる雪の中を家までたどりつこうとする外に選択肢がなかった。

 水曜日、イージージェットのワールドトレーサー・サービスからは何の連絡も情報もなく、私の気分はとても落ち込んでいた。私はこれらの楽器を40年以上も愛用してきたんだ。最近、私の娘ドリーがマンチェスターの「スティーブ」に会ったとき、誰かが私の(同じ)フルートをステージから持ち去ったのを見て、彼と彼の友人がそいつを追いかけていき、道を半分ほど走ったところで追いついてフルートを取り戻し、ギグへと走って戻っていったのだと話してくれたのだそうだ。私はまさにそれを覚えている。誰かが私に、まさにそれが必要なときに私のフルートを客席から手渡してくれたのを。- 奇妙なことだった!1975年のローマで、国家的な事件が起きているさなかに、私たちのトラックが盗まれて、その中にあったすべての私たちの楽器は1週間ほどなくなったままだった。今年、ルフトハンザが数時間ほど荷物をなくしたが、彼らはすぐにケースを追跡し見つけてくれた。私は、何年にも渡って何度か怖い思いをしてきたのだった。

 しかし、今回のイージージェットの状況は、希望がないように見え、そう思えた。ワールドトレーサー・サービスは、荷物がどこにあるのか、最後にどこにあったのかについて何の手掛かりも見つけられていなかった。タグやバーコードは、それらがちゃんとスキャンされてその情報が処理されていなければ、いったいなんの役に立つというのだ?これらが私のなくなってしまった道具なのだ。それらは、私のダブル・ホーン奏法に合うようにカスタマイズされていた。また、オザンナのリノ・ヴァイレッティが今週言った様に、「そのフライト・ケースは、本当に『宝物』だ。その中にあなたの栄えある歴史がすべて詰まっている」のだ。今回、私は本当に最悪の事態を恐れた。私は、イージージェットが正式に「なくなった!」と宣言するまでは、自分のプロとしての生活を立て直すことを始めることも、1ヶ月の失業保険を請求することも出来そうになかったのだ。

 私がどんなにストレスを抱え込んでいるのかがわかったため、妻のスーが職場から電話をかけてきてこう言った。誰もケースを探してなんていないのよ、と。彼女は私に何かしなさいと言った。- 誰か手伝ってくれる人を掴まえてみなさい、と。私たちは手始めにイタリアを当たってみることにした。なぜなら、ケースが本当にフィウミチノ空港を出たという証拠が何もなかったからだ。私のアドレスブックに登録されているあらゆるイタリアの友人たちにメールを出した。誰か空港に知り合いがいる人間はいないかと。友人の一人、天才ミュージシャンでオザンナ仲間のメンバーでもある、ジャンニ・レオーニが空港に電話をしようと言ってくれた。偶然にも、彼は1970年代のプログレッシヴ・ミュージックのファンで、ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーターや、オザンナ、バレット・ディ・ブロンゾ(ジャンニのバンド)を知っていた同情的な係員と話が出来たのだ。彼は、デスクを離れ、フライト・ケースを探しに行こうと決心してくれた。彼の手には写真があり、彼の頭には、それがどんなものなのか明確なイメージがあった。その夜遅く、彼はケースを見つけた。彼はジャンニに電話をし、ジャンには私にすぐにEメールを送ってきてくれた。「デヴィッド、ドラマは終わった、と君に告げることが出来てとてもとても嬉しいよ:君のフライト・ケースが見つかったんだ!!! それはまだローマの空港にあったんだ、…エレベーターの中に置き忘れられて!!!!!! 私たちのファンであるエリックがそいつを見つけて、私に1分前に電話して教えてくれたよ。」

 木曜日、エリック・コンテはそのフライト・ケースを午後のイージージェットの便に乗るように手配してくれた。彼は私に電話をかけてきてくれて、積み込みが終わったと知らせてくれた。私は彼の親切に、心の底からのありがとうを言った。私はすぐにガトウィック空港へそれを受け取りに出かけていった。だが、その時はまだ、私は、単純なピックアップが如何に難しいことであるのかを知らなかったのだ。

 ガトウィックでは、更なる混乱が私を待ち受けていた。たくさんの便が再びキャンセルとなっており、イージージェットのデスクには100人以上もの人々が列を作っていた。雰囲気は極めて険悪で、しかし、自分の番が回ってくるのを待つ以外に選択肢はなかった。2時間後、私は係の女性に話していた。彼女は適切な内線番号を教えてくれて、私は、まず、そのフライト・ケースが確実に到着しているかを確認しなければならないと強く主張した。私はその番号に30分もの間、なんの応答もないまま電話をかけ続けた。私の息子のジェイクが電話をしてきて言った。「戻ってきて、連絡があるまで寝てなよ」と。私はそうした。さらに30分ほど経ってから、スージーという名の女性がバゲッジ・ホールへのセキュリティ・パスを持ってきてくれた。私は再びメンジーズの係員に会うため列に並んだ。彼はどこにケースがあるのかをまったく知らなかった。私は、もう一度、周りの、混乱を極め、絶望的なパニックに陥った旅行者たちや、ターンテーブル、散らかったバッグ類を見回した。5分後、私は見つけた!

 私のフライト・ケースはターンテーブルの2番に投げ出されていた。ストラップ類は緩んで外れてしまっていた。しかし見た感じはOKそうだった。私の封印シールは剥がされており明らかに開けられていた。私は一方から近寄って中身が大丈夫かを確認した。スージーは、そのケースの中の本当に無数の内容物に驚きながら私を見ていた。明らかに無くなったものは一つもなかった。私は再び一つになり生まれ直したのだ!「ハッピー・クリスマス!」と私が「申告なし」のゲートを1ポンドのカートを押して通っていく際にスージーが言った。

 家についてから、しばらくして、私はワールドトレーサー・サービスの個人ページを開いてみると、「何の情報も得られません」と再び出ていた。私のフライト・ケースは別の無記名のタグが付いて到着していたのだが、オリジナルのタグはどっかへ行ったままだった。実際にこれらの荷物タグを本当に誰かがスキャンして、何かをやっているのだろうか?このシステムの混乱と崩壊の中で、何とかしようという人は誰もいないのだろうか?私はただとてつもなく幸運だったのだろう。私を助けようとしてくれた人々がいてくれて。警備員と妄想とが物事を見つけようとして殺到する誰をも押し留めていた。ものすごい喪失感と混乱の中でも、人々をケアしようとか、何か努力しようという係員はまったくいないように見える。今でもまた、ワールド・トレーサー・サービスはわたしのフライト・ケースがどこにあるのかについては「情報なし」のままだ。もう、私はそれを家に持ち帰ってきているというのに。私はそう入力した!

 クリスマスは旅行者の時期だ。私はイージージェットの列に並んでいるときにコソヴォから来たという男性と話しをした。彼は婚約者のスーツケースを見つけにきたのだという。彼は前日誤って見た目そっくりのものを取ってしまい、それを家に持って帰ってしまったのだという。彼は必死にそれを正しいものと交換したいと願っていた。イージージェットの係員たちは荷物の返還は受けられないと言い、ラベルを剥がしてしまった。それは唯一残っていた本当の持ち主のための希望の光であったのに。私たちは一緒にバゲッジ・ホールへと入っていった。彼にはまったく運がなかった。そこでは、私はま別の音楽仲間と出会った。発明家でもあるヘンリー・ダッグだ。彼もまた自分のバッグを探していた。ダブリン行きの便がキャンセルになったのだという。もう少し時間を遡ると、私は、間違ったチェック・インの列に並ぶように言われたアフリカ人の家族とも話しをした。彼らはコペンハーゲンの親戚を尋ねるはずだったクリスマス旅行を失ったばかりだった。そして自分たちがその便に間に合うようにそこに来ていたことを証明することができそうになかった。

 私はその日の空港での殺伐としたたくさんの人々を後にして、疲れ果ててはいたが幸せな男として家路に着いた。私は家族、友人そしてファンのネットワークに永遠に感謝する。彼らの、私の音楽的キャリアに対する継続的な支援に対して。それは二重に素晴らしいことだ。誰か私の知らない人が、助けを必要としているときに、そうするための余計な距離を行く用意が提供されたのだ。そんな助けなしには、私の家族と私は、こんな素敵なクリスマスを迎えることは出来なかっただろう。

 後で、私はいくつかの事柄を思い出した。ジャンニは、彼とエリックが電話越しにヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーターの曲を一緒に歌ったと言っていた。しかし、ジャンニはそれがどの曲だったのかを覚えていなった。私がエリックと話をしたときにエリックは、それが『ザ・リースト・ウィ・キャン・ドゥ』からの「ダークネス」だったと言っていた。音楽は人々をつなぐのだ!

                2010年12月24日 デヴィッド・ジャクソン

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# by invox | 2011-01-03 12:19 | ■Music
もうすぐ今年も終わるなぁ、と思っていたら、今年のライブ観戦を振り返っておこうとふと思いついた。もちろん、音楽の。時間軸に沿って思い出しながら簡単に。

1)クラウス・シュルツェ@国際フォーラム、3月20日(土)だったっけ?

 初来日。悪い足を少し引きずりながらの登場。ステージには5台のキーボードを中心に、大型のコンピュータのような機械がずらり。演奏中にはマックのノートも使用していた。前半1曲、後半1曲、アンコール1曲の合計3曲もやってくれた。2曲かなと思っていただけに満足感は十分。基本はインプロビゼーションだが、初来日ということもあってか、日本のファンへのサービスなのか、日本でも再三再発された「ミラージュ」などからのフレーズを鏤めてくれた。一つ、不満だったのは、バックに大写しにされたスクリーン上に出た日本語。誰が教えたのか、やれやれ、という感じの言葉がいくつか。この来日公演は、招聘元の長年の悲願でもあっただろうし、クラウス・シュルツェに対して、あまりに小さい会場で、というのも出来なかったのだろうなぁ。初日に行きましたが、二日目はどうだったのだろうか?そんなことを考えていたら、この日本公演はDVD付きでライブCDが出ているんですね。驚きました。

2)オザンナ@川崎クラブ・チッタ 4月2日(金)
 +デヴィッド・ジャクソン、ジャンニ・レオーニ

 こちらも初来日。イタリアのプログレ・バンドを数多く呼んできたチッタの実績は評価すべきかもしれない。オリジナル・メンバーのリノ・ヴァイレッティ(vo)にほぼ同年代のドラマー、サッサを除くと後はリノの息子を中心とした若いメンバー。そこにほぼ全曲で参加しているのがVdGGのデヴィッド・ジャクソン(sax,flute)と、ソロと1曲だけ参加のジャンニ・レオーニ(key)。ジャンニはオザンナの前身バンドの時のメンバーなのだそうだ。楽曲は基本的にはオザンナのレパートリーだが、演奏は激しい。歌が素晴らしい。リハーサルを少しだけ見させてもらったが、リノが突然ナポリ民謡を歌いだすと他のメンバーが全員それに合わせて演奏するということもあったりして、あぁ本当にナポリが好きなんだなぁと実感。デヴィッドもバンドを絶賛。

 当日の朝にデヴィッドをホテルに訪れて、午前中いっぱい話をした。前に会ったのは2004年だったからすでに5年半が過ぎている。その時の写真と今回のオザンナとの自家製パンフレットをプレゼントしたらとても喜んでくれた。デヴィッドの母親が今年1月に亡くなったのだという話もそのとき聞いた。その葬式で実の兄と40年ぶりに一緒にサックスを吹いたということも。お兄さんはアマチュアながら、自分よりも上手いんだ、と自慢げにいっていたのが印象的だった。

 ライブでは、オザンナの名盤と言われる2枚のアルバム「ミラノ・カリブロ9」と「パレポリ」からのナンバーの他にもデビュー・アルバムや再結成後のアルバムからの曲、さらにはバンド解散期のチッタ・フロンターレの楽曲などが演奏された。加えてゲストの持ち曲として、デヴィッドは「テーマ・ワン」と「ソンニ・ド・ロ」の2曲をバンド共に披露。アンコールで「テーマ・ワン」をもう一度やるという、リノ曰く「サプライズ」まで含めるとデヴィッドのオザンナにおけるポジションの重要さが分かるというものだ。ライブ後、サイン会までの短い時間に楽屋へとバンドを訪れデヴィッドに紹介してもらってサインなどを頂いた。バンドのメンバーにもお手製パンフレットを謹呈。リノが甚く感激して「ベリッシマ」を連発してくれた。作り甲斐があったというものだ。

 バンドは翌日早朝にソウルへと飛び、コンサートを行った後、同じ主催者の開催していたロジャー・ディーン展を見た後に帰国したとのこと。後日、パンフレットのデータなどをデヴィッドに郵送したところ、狙い通りまさに彼の誕生日に到着したとの連絡があった。しかも、そのデータを収めたCDRのジャケットに使用した2004年の写真でデヴィッドが来ていたTシャツをその日はたまたま来ており、娘さんに指摘されたのだと言う。そのCDRを手に同じシャツを着たデヴィッドの写真が送られてきたのは言うまでもない。

3)フィンランド・フェスト2010@渋谷JZ Brat  5月28日(金)
  ワールド・ミュージック・ショーケース

 出演は、スヴェング(フィンランドの超絶ハーモニカ4人衆)、レピスト&レティ(哀愁のヘルシンキ。アコーディオン&ベースのデュオ)、そしてフリッグ(若手No.1 フィドル軍団、圧倒的なパワー。初来日)。フリッグ以外は音を知らなかったのだが、さすがに素晴らしいバンドばかり。圧倒的なフィンランドの空気をたっぷりと堪能できた。三者三様だが、フィンランドの音楽は奥が深い。

 翌土曜日にフリッグのインストア・ライブ+サイン会が渋谷のタワー・レコードで開催された。こちらは、前日見たバンドをより間近で見ることが出来た分、細かいところまで楽しむことが出来た。まぁ時間は短かったけれども、バンドのギタリストであり、友人でもあるトゥオマス・ログレンとも久しぶりに対面し、話を出来たのが何よりだった。このバンドが彼の活動の一番中心にあると以前言っていたのも頷ける音楽だったのだ。是非また来て欲しい。

4)ピーター・ハミル@月見ル君思フ、新宿ピットイン 7月8日~11日

 恒例のピーターの来日公演。今年は各日4つの異なるテーマを掲げての挑戦。初日はギターのみ。二日目はピアノのみ、三日目はVdGG楽曲のみ、最終日はもしこれが人生最後のコンサートだったら、というもの。初日はアコースティック・ギターの音響が抜群に良い月見ルでのライブ。あとはピアノ重視でピットイン。もちろんダブル曲もあったが、延べ60曲程度を演奏した。個人的には、初日のギターのみのステージは日本では一度もやったことがなかったものなので大変嬉しかった。三日目はテーマがテーマだけにもっとも多くの観客が詰め掛けた。そして、これまでソロでは世界のどこでもやったことがない曲が飛び出したのだった。

 三日目には特別な観客が一人いた。父親がピーターの大ファンであったために"はみる"と名づけられた女性だ。そしてその父親は数年前に他界しているため、一人で父親がそこまで好きだったアーティストを見に来たのだという。コンサート終了後のサイン会の際に、この事実がピーターに告げられた。いや、こんなことってあるんだなぁ、と多くの人たちが感動していた。

 ピーターについては、すでに多くを語っているし、言葉で語るべきものでもないのでこの辺にしておく。次はVdGGの新作が来年3月に発表されるが、一足先にお披露目された3曲の中に、「文章」という曲があったことには驚かされた。まさに来日公演時にピーターが読んでいた芥川龍之介の短編集の中の一遍から取られたのは明らかだ。彼が私たちにこの作品が一番気に入っていると言っていたのは本当だったようだ。

5)DAAU(ダアウ)@六本木ヒルズ・アリーナ 9月11日

 ベルギー・ビール・ウィークエンド東京2010というイベントでのフリー・コンサート。これまで全く知らなかったジャズ系のバンドだ。編成はバイオリン、チェロ、アコーディオンにクラリネットというクラシックかと思いそうな楽器が並ぶ。音楽はミニマルなフレージングを重ねるタイプで、大きなうねりを作りながらそれぞれの楽器がソロを取るスタイルだ。これがまた長尺曲が多く、かつヘヴィでスリリング。酔っ払いだらけの会場では不評だったようだが、個人的には大満足だった。ライブ後に最新アルバムと今日のライブを収録したCDRを購入。サインも入れてもらった。この最新アルバムは6枚目だというから既にベテラン。若いのにたいしたものだ。今度是非きちんとコンサートを日本でやってもらいたいと心から思う。

6)ニック・ベルチェ/ローニン@スイス大使館/新宿ピットイン 10月13日、16日

 2006年以来久しぶりのニック・ベルチェ。以前よりもダイナミクスが増したようだ。ミニマルなフレーズの積み重ねとその変形が大変な緊張感と開放感の両方をもたらしてくれる。非常に強い音楽。全開はトリオ編成だったが、今回は5人編成。特に目を引いたのはパーカッション奏者のアンディ・プパート。硬質なピアノの音に煌びやかな表情を加えている。いつまでも見ていて飽きない。ついついニックよりも彼に目が行ってしまった。

7)スリー・フレンズ@月見ル君思フ 12月18日、19日

 昨年9月に続いて2度目の来日。但しメンバーチェンジがあった。ケリー・ミネアは去年9月の来日直後に脱退していたが、今年9月にキーボードのジョン・ドナルドソンとギターのアンディ・ウィリアムスが脱退したのだ。急遽加入したゲイリー・サンクチュアリ(key)には曲を覚えて練習するにはたった2ヶ月しかなかったことになる。ギターが一人になったことは大きな影響はないだろうと思っていた。もともとジェントル・ジャイアント時代は一人で演奏していたわけだし、ギターへの不安があるとしたら、昨年同様、ゲイリー・グリーンの記憶力によるものだけだ。時折フレーズを間違えるからね。

 ゲイリー・サンクチュアリは、ギャヴィン・ハリソンのソロ・アルバム「サニティ&グラヴィティ」に作曲と演奏の両面で貢献しているのを知っていたので実力に関する不安はなかった。しかし、想定外の事故が起きた。飛行機の乗り継ぎの際の手違いで楽器(キーボードとベース)が日本に来ていなかったのだ。せっかく音色作りをしてプログラムを仕込んであったキーボードがないということで、大変なハンデを負ってしまった。少なくとも初回の公演はそれでやるしかなかった。実際、コンサートでは音色の切替が上手く行かない場面も多々あったのだが、にもかかわらずゲイリーは出来る限りの演奏を精一杯行った。見ていてちょっとかわいそうだった。結局その日の夕方にようやく機材が届いたため残りのコンサートでは事なきを得たが、キーボードが届いた時にはほっとしたに違いない。後日、この話をデイヴ・スチュワートにしたところ、そんな恐ろしいこと、想像したくもないとのコメントをもらった。コンサートの前の一番の不安は機材のセッティングなんだ、とのこと。ゲイリー・サンクチュアリとはギャヴィン・ハリソンを通じて知り合っており、とても良い奴だよと褒めてもいた。

 今回、新たに加わったレパートリーには「プロクラメイション」や「ヴァレディクトリー」といった「ザ・パワー・アンド・ザ・グローリー」からの楽曲が含まれており、これは大変嬉しかった。ボーカルのミックも、全開よりはるかに伸びやかに歌っており、バンドとして充実してきているなぁという印象を強く受けた。ゲイリー・グリーンの望みどおり、このバンドでのアルバムを作って欲しいものだ。

          ◇

 以上が今年見た主要なライブの振り返りである。
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# by invox | 2010-12-28 23:26 | ■Music
Three Friends Live in Japan 2010 at the Moon Romantic, Aoyama, Tokyo

●1st show 18th Dec. Sat. 2010

  1. Prologue
  2. Playing the Game
  3. Advent of Panurge
  4. Empty City
  5. Just the Same
  6. Pantagruel's Nativity
  7. Proclamation
  8. ~Valedictory(メドレー)
  9. Boys in the Band
 10. His Last Voyage
 11. Giant(including Three Drums)
 12. School Days
 13. Free Hand
   ~encore~
 14. Working All Day


初日、リハーサルでは異様な雰囲気。なんと、アリタリア航空の手違いでローマ空港での乗換の際に、キーボードとベース・ギター(それとゲイリー・グリーンのスーツケース)が東京に着ておらず、急遽、キーボードの音色のプログラミングをゼロからやり直しているというのだ。これは大変なことになった。元々2台使用する予定だったようだが、それが急に1台となったうえに、曲の中での音色の分担が出来なくなったことで、あまりにも大変な手作業が発生するからだ。2ヶ月ほど前にバンドに加入したばかりのゲイリー・サンクチュアリにとっては、まだ楽譜も必要な状態であるため、これは大変なプレッシャーとなっただろうことは想像に難くない。

今回の公演では、昨年演奏しなかった曲も演奏するとのことで楽しみにしていたが、最初のステージで「ザ・パワー・アンド・ザ・グローリー」の1曲目とラストの曲をメドレーで繋いだ7,8が強烈だった。そして、キーボードの大変さをカバーするかのように、ロジャー・ケアリーがむちゃくちゃ凄いベース・ソロを披露(「Just the Same」の中で)してくれた。さらには「ジャイアント」の中で、マルコム・モルティモア、ゲイリー・グリーン、ミック・ウィルソンの3人によるドラム・バッシュが大きな見せ場となった。いやはや、まさか楽器の持ち替えを見ることが出来るとは! これにはとても驚かされた。ゲイリー・グリーンはフロア・タムを、ミック・ウィルソンは2つ並べたコンガをそれぞれ演奏。ミックも上手いが、ゲイリーも様々な叩き方で、マルコムとの違いを出していて、フロア・タム1個で豊かな表情を出していた。これら、ベース・ソロとドラム・バッシュはこの回だけの演出で、日曜の公演だけを見た方には申し訳ないが、とても得をした気分だ。ますますジェントル・ジャイアント張りになってきた、ということを実感した公演だった。


●2nd show 19th Dec. Sun. 2010, Matinee

  1. Working All Day
  2. Free Hand
  3. Just the Same
  4. His Last Voyage
  5. Playing the Game
  6. Pantagruel's Nativity
  7. Boys in the Band
  8. I Lost My Head
  9. Peel the Paint
 10. Think of Me with Kindness
 11. Proclamation
 12. ~Valedictory(メドレー)
   ~encore~
 13. In A Glass House


二日目は、土曜の夕方にようやく届けられたキーボードとベースのおかげでゲイリー・サンクチュアリの顔にも余裕が出てきたようだ。音色の切替についてはこれでかなり落ち着いて対応できるはずだ。前日のキーボードの上にもう1台を重ねる形でセットアップ。1曲目から全開の演奏。昨日よりも自身が感じられる。また、ベースのロジャーも自分のベースということで、よりパワフルな演奏だ。今回も、マルコムの息子のジェームスがエンジニアとして同行しているが、昨年よりもガンガンとパワフルなミックスで低音の効いたロックなサウンドを作り上げている。それに気を良くしたのかギターのゲイリーとボーカルのミックもガンガンにステージで動き回るし、シャウトする。いやはや参った。こんなにもロケンロールなジェントル・ジャイアントは聴いた事がない。それは、昨年の目玉の一つでもあったケリー・ミネアが歌った「Think of Me with Kindness」の今年バージョンにも顕著で、ミックのボーカルは美しく、かつ、パワフル。切々と歌いながらも力強い。バックもフル編成でガツンガツンと来る。この曲がこんなにもエネルギー溢れる曲だったとは、と思
い知らされた感じだ。昨日はやらなかった曲も含めて、大満足の回。


●3rd show 19th Dec. Sun. 2010, Evening

  1. Advent of Panurge
  2. I Lost My Head
  3. In A Glass House
  4. Empty City
  5. Proclamation
  6. ~Valedictory(メドレー)
  7. Think of Me with Kindness
  8. Prologue
  9. School Days
 10. Working All Day
 11. Peel the Paint
 12. Mister Class and Quality
 13. Three Friends
   ~encore~
 14. Giant
   ~2nd encore~
 15. Free Hand


そして、最終公演。実は、昼公演の後で、あるファンから、「アルバム『スリー・フレンズ』の通し演奏というのはやったのですか?」と質問を受けた。もちろん、その時点ではやっていなかったのでそう答えたのだが、本当に彼らがやるのかどうか、実は私自身半信半疑だった。ま、アーティストは気まぐれだから、と半ば期待していなかったというのが本音だ。しかし、彼らはやってくれた。全曲を、アルバムどおりの順番で。昼公演以上にバキンバキンに、ガツンガツンとロックだ。ロケンロールだ。最後の2曲は今回はこの回だけの演奏だったのだが、それだけになお一層、最後の分厚いストリングスの盛り上がり方に涙ぐんでしまった。

そして、アンコール。しかも2度も。最後の最後に「フリー・ハンド」だって!大興奮の会場だった。そして、3度目を求める手拍子は続いたが、メンバー全員が出てきて、ゲイリー・グリーンが、もう勘弁してくれ、巻きタバコをもう巻きかけてるんだ、と笑いを取った。メンバー全員が再び手を振ってステージを去った。

その後、しばらく時間を置いてからファン・イベント。何人かから質問を受け付けた。最初の質問はマルコムに対してスティックの持ち方が昨年と違うようだが、というもの。マルコムはきちんと答えるように見えて、途中で割と適当か?という答え方。その後もマルコムのGG以降の活動についての質問や、ゲイリーに対してアコースティック楽器は使わないのかという質問が出た。ゲイリーに拠れば、自分は練習していないのでもうチェロは弾けないがと笑いを取った後で(もちろん、チェロを弾いていたのはケリー・ミネアだった)、ミックはギターがとても上手いので、将来的には「メモリーズ・オブ・オールド・デイズ」なんかをギター2本でやることはありうるそうだ。リコーダーはちょっと難しいかも、とも。実際今回の日本公演では初回にミックとゲイリーとマルコムでのドラム・バッシュをやったのも、そういう試みの一つだったと答えていた。さらに、ミックとはどこで知り合ったのか?という質問では、昔イギリスで活動していたテイク・ザットというグループがあって、そのメンバーの内何人かがジェントル・ジャイアントのファンだった。マルコムがテイク
・ザットの仕事をした際にミックと知り合ったのだそうだ。ゲイリー・グリーンは、今のバンド・メンバー構成を気に入っていると言い、これでライブ・アルバムか何かを作るかもしれないと発言。もし本当ならかなり嬉しいゾ。

質疑が終わると、サイン大会。二人の元GGメンバーが一番人気だが、ライブで見た彼らの実力に、他のメンバーたちにも多くのファンが喜んでサインを求めていたのが印象的だった。特に2度目となったミックとロジャーにはかなり話し込んでいるファンもいた。ミックは今年5月にもグレン・グールドマンと共に10ccとしても来日しているので、10ccのファンも見に来ていたのかもしれない。最も新しいメンバーのゲイリー・サンクチュアリは、元々セッション活動が中心なため、知名度は低いのだが、ジャズ・ファンク・バンドのインコグニートやギャヴィン・ハリソンのアルバムでの彼の貢献を知る人には貴重なチャンスだったのではないだろうか。かく言う私もギャヴィン・ハリソンのソロ・アルバム「サニティ・アンド・グラヴィティ」に彼のサインを頂いた。

いやはや、ケリーミネアがいなくなっただけでなく、直前9月にメンバー交代があったので心配していたのだが、むしろ、以前よりもロック・バンドとしてのまとまりと押し出しの強さが加わり、存在感がいや増していたのには驚かされた。私が話をした去年の公演を見たファンのほとんどが同じ感想をもたれたようだった。このままバンド活動をぜひとも続けていって欲しいものだ。アルバムと3度目の来日と。
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# by invox | 2010-12-20 23:49 | ■Music
今週末の土日は、いよいよ「スリー・フレンズ(Three Friends)」の来日公演だ。昼公演を含めて3ステージ。最終公演後にはファンとの交流パーティが予定されている。

スリー・フレンズは、コーラス・ワークだけは再現することが出来ないようだが演奏は素晴らしい。ただ、ちょっと残念なのは、バイオリン、サックス、リコーダー、チェロ、シロフォン、ヴィブラフォン、アコースティック・ギターなどのアコースティック楽器の演奏が、シンセサイザーなどに置き換えられていることだろうか。ただそれが、むしろ、よりソリッドでロック的なガンガンのパワーとなっており、ロック・バンドらしい音楽になっている。

昨年9月の公演では、オリジナル・メンバーだったケリー・ミネアを含むツイン・キーボード、ツイン・ギターの7人編成だったが、来日直後にケリーが脱退し、今年9月にはギターのアンディとキーボードのジョンまでもが抜けてしまった。替わりにセッション・キーボーディストとして実力派のゲイリー・サンクチュアリが参加して、結果としてギターもキーボードも1人ずつの5人編成となっている。これはGGの編成と同じだ。

楽曲は、バンド名ともなっているアルバム「スリー・フレンズ」からの楽曲を全曲通しでやると言うが、他にも70年代には余り演奏しなかった曲もやるし、「フリー・ハンド」や「ジャスト・ザ・セイム」、「ボーイズ・イン・ザ・バンド」などの人気のある定番曲も演奏してくれるだろう。

それにしても、マルコムのドラミングのスタイルは個性的だ。とてもあの複雑なリズムを叩いているように見えないのだ。下手をすると、両手両足が別々のリズムを叩いているのではないかとも思えるときでさえだ。見た目は完全に的屋の親父みたいなんだけどなぁ。

ゲイリーは、こちらもいい親父になっていて、昔の映像や写真からは想像がつかない。かかとを後ろに振り上げて、つま先で床を蹴るリズムの取り方は昔と一緒(とは言え映像でしか見たことないのだが)で、これは、昨年の来日時に多くのファンが「あぁゲイリー・グリーンだ」と感動していたポイントだ。それにしてもゲイリーはお茶目だった。

この2週間ほど、ジェントル・ジャイアントのアルバムを聴き直して、ライブの予習をしている。果たしてどんな曲が演奏されるのだろうか。去年よりもかなりレパートリーが増えたらしいと聞いているので、とても楽しみである。
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# by invox | 2010-12-13 15:13 | ■Music
今月は、Three Friendsのライブが行われる。日本公演としては2度目となるが、前回、昨年の9月の来日時のメンバーから3人が去り、1人が加入した。結果、今回は5人編成となった。

去った3人の内、キーボードのケリー・ミネアは元々6年前に全ての音楽の仕事から引退をしていたと言っていたので、バンドと一緒にライブをやるのも元々一時的なものと割り切っていたに違いない。なのであっさりと切りの良かった日本公演を最後に元の引退生活へと戻って行ったのだろう。

一方、ギターのアンディ・ウィリアムズとキーボードのジョン・ドナルドソンについては、今年の9月までの公演ではバンドにいたので、どうして脱退したのか理由は定かではない。やはり、昔のバンドのコピーばかりであることに対する不満があったのだろうか。それとも他の仕事が忙しくなったのか。

今回の日本公演がThree Friendsとしてのデビューとなるゲイリー・サンクチュアリは、元々優秀なセッション・ミュージシャン、サポート・ミュージシャンとして有名で、なかでもジャズ・ファンクの大物ブルーイ率いるインコグニートでの活動が知られている。こちらの領域ではアラン・パーソンズ・プロジェクトやギャヴィン・ハリソンとの活動がある。他にもスティングやマイケル・マクドナルド、スティーヴ・ウィンウッド、チャカ・カーンといった大物との活動もあり、要するに相当な演奏技術とセンスを持っているということだろう。しかも、イギリスの国立映画・テレビ学校で作曲の修士号を取得したばかりだというから、じっくりとお手並み拝見といきたいところだ。なんせ、ケリーの作ったGGのキーボードのアレンジは大変複雑かつトリッキーで高度にテクニカルなものなのだから。

e0006365_22594322.jpg3Fのライブを見た後で、GGのアルバムを聴き直してみると、緻密に練られたアレンジで、メンバー全員が複数の楽器を同一曲内で持ち替えて幅を出すという極めてトリッキーなことをやっているのがよく分かる。それを3Fでは楽器の持ち替え無しに演奏するのだが、多くの楽器をキーボードがカバーしているので、バイオリン、サックス、リコーダーやシロフォン、ヴィヴラフォンといった楽器を期待するとがっかりするかもしれない。また、GG独特の5人中4人によるコーラス・ワークは残念ながら再現されていなかった。せっかくボーカルを取れるメンバーが3人もいるのだから、今年は頑張ってやってほしいのだが。

GGの後期はアメリカでの商業的成功を目指したのか、アメリカン・ロック的な楽曲が増えた。アルバム「インタビュー」あたりから徐々にその傾向が出始めて、「ジャイアント・フォー・ア・デイ」でピークに達したように思う。キーボードが引っ込みギター・サウンドを前面に押し出して、シンプルな・ロックンロールを多くしていった。もちろん、見るべきところがどこにもないというようなことはないのだが、前半のアルバムと比較すると「面白み」や「スリル」が減っていったように思う。

3Fは、3枚目のアルバム「スリー・フレンズ」を録音したゲイリー・グリーン(g)とマルコム・モルティモア(ds)を中心にしているためか、初期前期の楽曲を中心にセットリストを組み立てている。なので重厚かつ複雑なGGの音楽性をもろに受け継いでいると言っていいだろう。一般的には「オクトパス」が最も人気があると言われているが、個人的には「アクワイリング・ザ・テイスト」や「パワー・アンド・ザ・グローリー」が大好きだ。これに「スリー・フレンズ」を加えたアルバムの中からの選曲が中心だった昨年の公演は大変満足の行くものだった。今年はさらにレパートリーが増えていると言うから、どんな「新曲」を見せてくれるのかとても楽しみである。
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# by invox | 2010-12-07 23:00 | ■Music