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"The Bruised Romantic Glee Club" Jakko

"The Bruised Romantic Glee Club" (2006) Jakko M. Jakszyk
Disc One; Now

1. The Bruised Romantic Glee Club (Jakszyk) Jakko, Gavin, Mel
2. Variations on a Theme by Holst (Jakszyk) Jakko, Caroline, Helen, Ian-Mac
3. Catley's Ashes (Jakszyk) Jakko, Gavin, Mark, Mel
4. When Peggy Comes Home (Jakszyk) Jakko, Chris
5. Highgate Hill (Jakszyk) Jakko, Gavin, Nathan
6. Forgiving (Fripp/Jakszyk) Jakko, Robert, John, Gavin
7. No One Left To Lie To (Jakszyk) Jakko, Mel, Gavin
8. The Things We Throw Away (Connah) Jakko, Lyndon
9. Doxy, Dali and Duchamp (Jakszyk) Jakko, Dave, Gavin, Danny
10. Srebrenica (Jakszyk) Jakko
11. When We Go Home (Jakszyk) Jakko, Robert, Suzanne, Django, Camile

Disc Two; Then

1. As Long As He Lies Perfectly Still (Wyatt/Ratledge) ~
2. That Still and Perfect Summer (Jakszyk) ~
3. Astral Projection In Pinner (Stewart) Jakko, Hugh, Dave, Clive, Gary
4. Pictures of an Indian City (Fripp/Sinfield) Jakko, Pandit, Mel, Gavin
5. Nirvana for Mice (Frith) Jakko, Gavin, Dave
6. Islands (Fripp/Sinfield) Jakko, Dave, Danny, Mel, Ian-Wallace
7. The Citizen King (Hodgkinson) Jakko, Gavin, Dave
8. Soon After (Jakszyk) Jakko
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いやぁ本当に久しぶりのソロ・アルバムだ。21CSBの活動が間に入っていたためずいぶんと待たされたことになる。しかし、待たされただけのことはある。とても素晴らしい作品に仕上がっている。「今」と題された1枚目はJakkoのオリジナル楽曲(1曲だけリンドン・コナーの作があるが)を、「その時」と題された2枚目は彼が少年時代に大好きだったヘンリー・カウやソフト・マシーン、キング・クリムゾンの楽曲をカバー(こちらにも1曲だけ短いオリジナルがあるが)している。

Jakko自身がマルチ・プレーヤーであるため、いつものようにギター、キーボード、ベース、一部の管楽器などほとんどを自分で演奏している。そこに多彩なゲストが加わっているのだが、それがまた凄い面子だ。今回の最大のゲストはやはりメル・コリンズだろう。ベスト・パートナーであるドラマーのギャヴィン・ハリソンを除くと最も参加率が高い。21CSBで最も意気投合したのがメルだったのだろう。

Gavin Harisson :Drums (Dizrhythmia, Pocupine Tree)、Mel Collins : Alto, Tenor, Soprano, Bariton saxes, Flute、Caroline Lavelle : Cello、Helen Kaminga : Viola、Ian MacDonald : Flute、Mark King : Bass (Level42)、Chris Baker : Irish Pipes、Nathan King : Bass、John Giblin : Bass(Acoustic/Fretless)、Robert Fripp : Guitar, Soundscape、Lyndon Connah : Piano (元64 Spoons, 現Level42)、Dave Stewart : Keyboards, Programing, Piano, Organ、Danny Thompson : Double Bass、Suzanne Barbieri : Backing Vocals、Django Jakszyk : Voice、Camile Jakszyk : Voice、Hugh Hopper : Bass、Clive Brooks : Drums、Gary Barnacle : Alto Flute, Flute, Bass Flute, Piccolo, Tenor/Soprano Saxes、Pandit Denish : Tabla, Vocals (Dizrhythmia)、Ian Wallace : Drums

ドラムスはソフト・マシーン楽曲でのクライヴと、「アイランズ」でのイアン・ウォーレスの2曲を除くと、ドラムスありの楽曲のすべてをギャヴィンが叩いている。この二人の相性の良さはずば抜けている。まるでフィル・ミラーとピップ・パイルのようだ。デイヴ・スチュワートも7曲で参加という高い貢献率。特にヘンリー・カウの楽曲では"Guide Keyboard"や"Paintaking Programing"といった重要な役回りでも大活躍している。

過去のアルバムでは、Jakkoのポップ・センスが前面に出ており、『カンタベリー・ポップ』の若手代表という形での評価が定着していたが、本作では随分とプログレッシヴな要素が増している。それが21CSBでの活動によって触発されたものであるものなのは間違いないだろう。

元々幅広い音楽性のJakkoの音楽的な出発点は、ハットフィールズやソフトマシーン、VdGGにKing Crimson。なかでもカンタベリーの音楽に対して深くのめりこんでいたようだ。彼が学生のときに参加した64 Spoons(中心人物の一人Lyndon Connahがゲスト参加しているが、彼はJakkoもメンバーだったことがあるLevel42の再結成版に参加してMark Kingと一緒に演奏している。そのLevel42からは管楽器でGary Barnacleも参加)ではハードなアヴァンギャルド・ジャズ・パンクを演奏しており、CDショップではオルタナティヴに分類されることもある。その後JakkoはDave Stewart, Pip Pyleと共にRapid Eye Movementを結成。Jakkoにとっての最大の音楽的ヒーローであるDave Stewartとの活動を若くして行っている。その後ソロとしてシングルを発表していくが、いずれも3枚出したところでレーベルが倒産するという悲惨な目にあっている。中でも最初のレーベルChiswick時代には、アルバム『SILESIA』をVdGGのDavid JacksonやDave Stewartをゲストに録音しているが、契約の関係で大陸の2カ国でしかリリースされていない。同時期にDJの「The Long Hello Vol.3」にJakkoが2曲で参加し、うち1曲ではPeter Hammill/David Jacksonの楽曲を歌っている。

とは言いつつも、そういった下積み時代を支えたのはデイヴ・スチュワートであり、様々なセッションにJakkoを呼び、この時代にJakkoは人脈を大きく広げている。その中にPeter Blegvadの1枚目のソロ・アルバム「Naked Shakespere」があり、これがきっかけでPBのソロ・アルバムのほとんどに参加することになる。また、PBがJohn Greavesと組んだThe Lodgeにも参加している。

その後、1986年あたりから徐々に彼の知名度が上がり初める。またこの頃に盟友Gavin Harissonとも出会っている。様々なミュージシャンへのアレンジや演奏での貢献は数多く、また内容も素晴らしかったようだが、常に「裏方」として扱われていた。その彼に光を当てることとなったのが、Tom Robinsonとの出会いだろう。TRのソロ・アルバムとして企画された「We Never Had It So Good」(「Blood Brother」というタイトルで、ボーナス4曲付きで再発されている)でのJakkoのあまりに素晴らしい貢献に感動したTomは、アルバムをソロ名義から二人の連名としたのだった。このアルバムにもギャヴィンが参加している。そして、このアルバムのプロモーションで出演したTV番組での演奏を見たのがLevel 42のMark Kingであった。当時Alan Holdsworthが抜けたばかりだったLevel 42にホールズワースの後任としての白羽の矢が立ったのだ。このJakkoが参加したラインアップでのLevel 42は来日公演も行っている。ライブDVDもでているが、残念ながらちゃんとしたスタジオ・アルバムを製作する前にバンドは解散してしまった。この時も一時的だがギャヴィンもバンドに参加している。

また、どういう経緯なのかは不明だが、Richard Barbieri, Steve Jansen, Mick Karnの元Japan3人組との交流もあり、Jakko名義だが実質バンドとしての4曲入りミニ・アルバム「Kingdom of Dust」も発表されており、Jakkoの知名度を上げるのに貢献した。そのつながりは特にRichard Barbieriとのものが長く続いているようだ。

Gavin HarissonとPandit Denish, Danny Thompsonの3人と組んだバンドディズリズミア(Dizrhythmia)は一聴するとAORのようにも聞こえるのだが、実際にはインド音楽のフォーマットで西洋音楽を演奏する、という実験的な試みを行っており、このテイストは現在も楽曲によっては大きく反映されている。今回のアルバムでの「インドの街の情景」は、ベースこそDannyがいないがDizrhythmiaである。まぁ、イントロが「げげげの鬼太郎」を連想させるというのが日本人には不幸なことなのかもしれないが…。

CD1="NOW"ではどうしても21CSBでも発表された「Catley's Ashes」が耳を引くが、21CSBバージョンと比べるととてもタイトで少しジャズロックよりの演奏だ。1曲目からここまでの流れが特にアルバムの中でも印象が強い。
次の山場は5,6の2曲の流れだ。ここもまた入り込んでしまう。その後じわじわと来る曲が続き、ラストに繋がっていく。大曲の間に短い小曲を挟むスタイルは従来も見られたものだが、このアルバムでも効果的に使われていると言えよう。このディスク単独で発売されていたら、このアルバムのインパクトはもっと強いものになっていたのではないだろうか。

CD2="THEN"は、カバー曲中心だが、知っている曲ばかりなだけにどうしても最初にこちらに注意が行ってしまう。オリジナルと比較してしまうので、どうしても「違い」に耳が行くのだが、それが私のように良い方向に作用する人もいれば、否定的に作用する人もいるだろう。この発表の形が良かったのだろうかとふと考えてしまった。そういうことを抜きにすれば、このディスクも大変楽しめる。「違い」を否定的に捉える人はオリジナルを聴いてればいい。「音楽する」ことを知っている人は「違い」こそが大事なのだということを知っているはずだ。それを踏まえてぜひとも鬼太郎風?「インドの街の情景」を楽しんでもらいたい^^);
by inVox | 2006-11-17 00:19 | ■Music

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