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「ソフィー」ガイ・バート

「ソフィー」ガイ・バート(黒原敏行 訳)創元推理文庫

以前、TVで見た映画「穴」の作者の作品だという紹介文を見て驚いた。「穴」は原作(「体験の後」と「穴」で訳出されている)を読んでいないので、映画の印象しかないが、かなり面白かった。なので、「早熟の天才」「魔術的小説」などと書かれている煽り文句よりも、そちらが決め手となって購入した。

「ソフィー」ガイ・バート_e0006365_23361053.jpg二人の会話と独白、回想と現在という場面の混在は、今では珍しくない手法だと思うが、これが発表された1994年ではどうだったのだろうか。まだ、映画やTVドラマもさほどアクロバティックな場面展開を多用していなかったようにも思えるのだが。その手の時間と空間、視点の入れ替わりの激しいものが増えてきたのは90年代後半からだったように思う。それはまずSF映画から始まったのではないか。あるいは、もっと以前に、SF小説の中でそういった手法を用いた作品がクローズアップされ始めたのが先かもしれない。めまいを起こしそうな感覚とでも言うのだろうか、自分自身のいる場所・時間というものの感覚がおかしくなっていくような感じを読むもの・見るものに与える作品が随分と増えたものだと思う。

ソフィーという少女は、一人称で登場するが、登場しない。マシュー(マティー)による物語りが続く。それは容易に「映像化したくなる」だろうものだ。そんなイマジナティヴな回想シーンが壊れていく後半はちょっと残念だ。もう少し落とし方を工夫する余地はあったのではないかと感じた。少し性急に終わらせた感じがした。他にもう一作だけ、小説作品があるようなので、訳出されればぜひそれも読んでみたい。
by invox | 2010-01-06 23:36 | ■Books

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