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「蠅の王」ウィリアムゴールディング

「蠅の王」ウィリアムゴールディング

「蠅の王」ウィリアムゴールディング_e0006365_23552068.jpg著名な作品ということでタイトルのみ知っていた、あるいはそれに影響を受けた音楽は耳にしたことがある文学作品への挑戦第2弾。ノーベル文学賞を取った人だとは後から知った。"Lord of the Flies" という原題はまったく異なるイメージを渡しに持たせていたのだけれども、実際の作品は無人島に不時着(墜落?)した飛行機の生き残りの少年たち。12,3歳の「大きな子」たちと「小さい子」たち。主人公ラーフは「大きな子」の一人で自意識に目覚めつつある少年。準主役かと思われる少年たちもいる。

無人島で、大人の目がなく、知識も少なく、考えるよりも遊ぶ方が好きな子供たちがいとも容易く野蛮人に成り下がっていくことか。恐ろしいのは当人たちは自分たちが以前の文明世界に生きていた時の自分と変わったという自覚がまるっきりないこと。単に大人から怒られることのない千載一遇のチャンスを楽しんでいるのだ、程度の意識しかないということ。まるで、今の日本人のようだ。ルールとか学習ということからはみ出すことが素晴らしいことであるかのような錯覚に陥ってしまっていて、無礼な振る舞いも、思いやりのなさも全て「自分だけは違う」から「当然の権利」として許されて当たり前だという意識。それと似ているような機がする。

子供は小さい頃は、親から愛されて、あるいは子供から嫌われることを恐れた親から、甘やかされることが多い。通常であれば、それは思春期に差し掛かるまでにはその状態は抜けてしまっていなければならないのだが、親が抜け切れていないと子供はスポイルされてしまう。つまり甘やかされる・ちやほやされる・大事にされる・尊重されることが「当たり前」になってしまい、そうでない状態に対して耐えられなくなってしまうのだ。そうすると、小さな子が要求が通らないときに駄々をこね、泣き喚くようにわざと悪さをする・切れる・暴れる・責任を放棄する。自分たちがまったくの馬鹿・子供に見えることも知らずに。それが当然の権利であり、自分たちは単にそれを主張しているだけだという態度・思い込みで。

最初のうちはまるで「2年間の休暇」のような雰囲気だった。だけど読み進むに連れて背筋がうら寒くなってきた。一体いつの作品だろうと思った時、これが小説の中ではなく、今の現実の世界でも起きていることに思い当たった。そうだ私にも蠅の王が囁いていたのだ。
by inVox | 2006-07-27 23:56 | ■Books

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