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「ゴールデン・マン」 フィリップ・K・ディック

「ゴールデン・マン」フィリップ・K・ディック(著) 浅倉 久志、ほか(訳)
「まだ人間じゃない」フィリップ・K・ディック(著) 浅倉 久志、ほか(訳)

「ゴールデン・マン」 フィリップ・K・ディック_e0006365_23234416.jpgこういっては何だが、最近のハヤカワ文庫は、分冊化が多すぎる。元本が1冊でも2冊、3冊は当たり前。ひどいときは5冊にまで分冊化されて邦訳が出ている。まぁ、昨今の日本の読書文化の停滞に対抗するための手段としての「読みやすさ」優先の商品化というコンセプトは分かるのだが、文字は大きく、1ページ辺りの文字数は少なく、文字間・行間はゆったり目に取る、1冊1冊は手軽な薄さにしてすぐに読み終えられる程度に抑える...、というのが果たして読書人口の増加に本当につながっていくのか、はなはだ疑問である。読まない人はそんなことをしたって読みやしないのだ。むしろ、小学校に入る前からの親による読み聞かせを奨励し、小学校低学年での読書量を増やすための児童書の充実を図るべきだろう。小中学校の図書館の質量ともの充実も必要だ。加えて、何でも知っている図書館司書の育成も影響力が大きいだろう。

「ゴールデン・マン」 フィリップ・K・ディック_e0006365_2324236.jpgとはいえ、ディックのこの短編集は2分冊はちょうど良い判断だったかもしれない。何せ読み応えのある本だからだ。映画の原作といっても、「未来を見ることが出来る男」という設定だけが同じで後はまったく違うので、これを「原作」として宣伝してもいいのだろうか>映画、と思ってしまう。映画は、まったく別のエンタテイメントとして楽しむのがいいだろう。

とは言え、『ゴールデン・マン』を読んでみて思ったのだが、この人の作品はおしまいが所謂エンディングという感じではないものが結構あるなぁ。突き放す、というケースもあれば、尻切れトンボ的なものもあるし、その分「続き」を想像してしまう余地が読者に残されている。しかも奔放に想像してしまうような仕込がしっかりと出来あがった状態でだ。だからこそ、映画化の話も多いのだろうし、しかも感嘆には実現しないのだろう。結局アイディアと設定だけが残ってしまう、というケースが多いのではないだろうか。

ディック自身が語るエピソードの中にハインラインの名前が出てきたのには驚いた。なるほどね。こういう関係があったのか、という思いもかけない話だった。いいねぇ。それでは、ちょっと間に別の本を入れてから『まだ人間じゃない』に進もうか。
by invox | 2008-04-22 23:25 | ■Books

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